経営計画の限界

 

経営者は、なにかと未来を予測したがる生き物です。

 

景気はどうなるのか、円高はどうなるのか、どんな事業が伸びるのか、競合他社はどう動くのか、何を作ればもっと儲かるのか・・・

 

したがって、ほとんどの「経営計画」は、未来を予測しようとして作られます。

 

そのため、経営計画は、未来は過去の延長線上にあるという前提に無意識に立って作られているのです。

 

なぜなら、その前提に立たなければ、未来など予測しようがないからです。

 

また、予測をしようとすると、表現がいやが応にも具体的になります。

 

「3年以内に、新規出店を200店舗おこない、総店舗数を500店舗にする」という具合に。

 

しかし、予測に必要な情報が十二分に揃うことはあり得ず、わずかに把握している情報すら短期間で変化してしまう今日において、したいと思っても正確な予測ができないことこそが、一番の問題なのです。

 

だからこそ、最近の中期経営計画は、策定後1年程度で陳腐化することが多いのです。

 

未来シナリオとは

 

そもそも、予測することに意味があるのでしょうか。

 

持続的な競争優位が保証されない環境のもとでは、経営スタイルを「登山」から「航海(帆船による)」に変える必要があります。

 

そして、航海スタイルの経営において重要なことは、「陸地(目標)を見定めている」ことです。

 

航海においては、急変する天候や波の状態に対応する機敏性と柔軟性を身に付けるだけでは不十分です。

 

単に臨機応変に舵を取り帆の張り方変えるだけではなく、変化する経営環境のなかで企業として向かうべき方向を見定めていることが大切です。

 

そうしないと漂流経営になってしまうからです。

 

そのために必要なものが、ビジョンとしての「未来シナリオ」です。

 

経営者が「未来シナリオ」を語ることにより、社員は経営環境が変化していく方向と、企業として目指していく方向を見誤ることなく見つめることができます。

 

「未来シナリオ」においては、「何が起こるのか」ということと「何をめざすのか」の2つを生き生きと描く必要があります。

 

「未来シナリオ」は、これから先社会や市場で、どのような出来事が起こるのかを予測するものではありません。

 

これからどのような「物語」が起こるのかを予見し、わかりやすく述べたものです。

 

「未来シナリオ」を語るときに大切なことは、「物語」を語るということです。

 

それを聞いた人が、具体的なイメージを膨らませ、何らかの直観を得られるような「想像力に満ちた物語」であることが大切です。