大学生就職企業人気ランキング

昨年までは8月1日解禁だった選考が、今年から2ヶ月前倒しになり6月1日からとなったので、6月末のこの時点では、内定をもらった学生諸君が多数いることでしょう。

 

就職活動というと、昔からマスコミが好餌としているネタが、就職先人気企業ランキングです。

 

マイナビによると「2017年卒マイナビ大学生就職企業人気ランキング」は、こうなっています。

 

参照リンク▼
2017年卒マイナビ大学生就職企業人気ランキング-文系1位はJTB、理系は?

  文系 理系
1 JTBグループ 味の素
2 全日本空輸(ANA) 東日本旅客鉄道(JR東日本)
3 エイチ・アイ・エス(H.I.S.) 資生堂
4 日本航空(JAL) トヨタ自動車
5 三菱東京UFJ銀行 サントリーホールディングス
6 東京海上日動火災保険 カゴメ
7 三井住友銀行 明治グループ(明治・Meiji Seika・ファルマ)
8 電通 NTTデータ
9 博報堂/博報堂目ディパートナーズ 山崎製パン
10 みずほフィナンシャルグループ ソニー

 

大学生の就職先企業の人気ランキングは、昔から世相を反映するなどと言われていますが、たしかに私が大学4年生だったことのランキングとは、だいぶん様変わりしています。

 

ちなみ、1986年卒の就職先企業の人気ランキングは、こうなっていました。

 

     文系 理系
  当時の社名 2017年順位 現社名  当時の社名 2017年順位 現社名
1 東京海上火災保険 6位 東京海上日動火災保険 日本電気 100位以下
2 住友銀行 7位 三井住友銀行 富士通 54位
3 富士銀行 10位 みずほファイナンシャルグループ 日本IBM 100位以下
4 松下電器産業 100位以下 パナソニック 日立製作所 11位
5 日本電気 100位以下 松下電器産業 12位 パナソニック
6 三菱商事 66位 ソニー 10位
7 日本IBM 100位以下 東芝 100位以下
8 日本生命保険 20位 本田技研工業 26位
9 第一勧業銀行 10位 みずほフィナンシャルグループ トヨタ自動車 4位
10 三井物産 65位 三菱電機 16位

 

1986年の人気ベスト10については、2017年における順位と、合併等で社名変更があった場合の現社名を併記してあります。

 

この表を見ると、いくつかのことが分かります。

 

  • 30年以上の時を超えて、ベスト10の中に留まり続けている企業が、文系と理系を合わせて5社ある。
  • ただし、その4社のうち合併を行わずに、30年前と同じ社名を残しているのは、ソニーとトヨタ自動車の2社である。
  • 1986年より2017年において、順位を上げた企業は、トヨタ自動車1社のみである。
  • 2017年に100位以下に消え去った企業が6社ある。

 

「不正会計処理」により糾弾を受け、2016年3月期決算で5000億円を超える赤字額を計上した東芝などは、理系の人気ランキング7位に入っていた30年前から、業績も人気も大幅に下落しました。

 

こうした就職企業人気ランキングの移ろいを見ていると、人間の過去の歴史が物語るとおり、どんな覇権国家も必ず衰退し滅びることを改めて強く感じます。

 

ローマ帝国、大唐帝国、モンゴル帝国、スペインとポルトガル、大英帝国・・・・

 

モンゴルのGDPはどれほどで、ポルトガルの国際社会における影響力はどれほどであるか、それを考えれば「諸行無常、栄枯盛衰は世の掟」であることは、否が応でもでも分かるはずです。

 

現在、地球上において最強のアメリカ帝国もすでに、凋落期に入っています。

 

世の中や人の営みとは、そういうものである。

 

でも、ただ「しかたがない」と言い放つだけでは芸がありません。

 

なぜ、あらゆる帝国は滅び、あらゆる繁栄の時代には終わりが来るのか、この世の春を謳歌していた花形企業が一転して頓挫してしまうのか。

 

その理由について考えてみます。

 

組織は多様性を失い均質化すると滅びる

創業者が起業出来たのは、いままでに他の会社が展開していなかったビジネスモデルを確立したためだから、創業者というものは、アイデアや創意工夫の才を相応に持っている人です。

 

また、サラリーマンとしても、平均以上の成果を上げていたにも関わらず、あえて宮仕えの道を捨てて独立独歩のリスクをとったわけだから、自立心も旺盛です。

 

創業者が優秀で、時の運にも恵まれれば、ビジネスは成功し、企業は急成長します。

 

この急成長の局面においては、常に「人手が足りない」「猫の手でも借りたい」という状況が続きます。

 

そこで、この窮状を凌ぐために、そこら辺でウロウロしている「猫の手よりも、少しはまし」的なはみ出し者のような若者達を雇い入れ、戦力化していくことになります。

 

こうしてかき集められた若者達は、創業者並みの才覚や自立心は持ち合わせていませんが、もともと「はみ出し者」なので、その時代の価値観にはなじみが悪く、ちょっとひねくれ者で、やや怪しい人脈やら、意外な裏技などを持っています。

 

急場しのぎの腰掛けバイト感覚で仕事を手伝い始めたら、いつの間にかどっぷり深みにはまってしまった若者達は、数年するとリーダー格になり、企業の屋台骨を支えるようになります。

 

経営者としては四苦八苦しながらかもしれませんが、ここまでは企業として、たいへん望ましい展開といえます。

 

ところが、このあと事情は一変します。

 

企業が成長を続け、社長が商工会議所やローターリークラブの活動に勤しむうちに地元の名士なり、ついには株式が上場され、社長のインタビュー記事や顔写真がマスメディアによく載るようになると、この会社に「これまで来たことのないタイプの若者達」が押し寄せてきます。

 

「これまで来たことのないタイプの若者達」とは、東大京大とか早大慶大とかに在籍する「勉強ができる子達」のことを指しますが、「御社の将来性」を見込み「若い企業での活躍の場」を求めて、彼らがわわわらと集まり始めます。

 

こうなると、たちまち人気企業ランキングに入り、就職倍率がうなぎ登りとなる。

 

2017年の就職先企業の人気ランキング100位までを見ると、特に文系の方に、あまり馴染みがない社名がチラホラ出ています。星野リゾート(これは皆が知るところかもしれません)、アイ・ケイ・ケイ、アニメイト・グループなどです。

 

本来は若干名だけ採用したいのに、1000名もエントリー応募者がいると、全員をインターンで受け入れてから見所がある奴だけ残すというような手間のかかることは出来ません。

 

せめて書類選考で、100人くらいに絞り込みたいと思っても、「東大法学部」や「ペンシルベニア大学ウォートン校MBA」などのスペックを持つ応募者を書類選考だけで落とすわけにはいきません。

 

せっかく書類選考で100人に出来ても、100人が100人そういう書類選考だけでは落とせない華麗な肩書きの持ち主ばかりになると、詰まるところそれ以外の大学や短大・専門学校出身者には、最初から面接を受ける機会が無くなります。

 

人材と採用について、よほど一貫したブレのない方針を確立している企業以外は、すべてこの道を進むことになります。

 

実際には、人材と採用についてしっかりしたポリシーを確立出来ていないまま、「いままで来たことのないタイプの若者達」が応募してくることで、「うちの会社も、ここまで来たか」という感慨に耽る経営者が多いのです。

 

結果的に、創業者のようなクリエティビティと自立心がなく、急成長期の「はみ出し者」社員のような懐の深さもない、「知名度、権威、多量の情報、高い賃金」にこそ価値があると信じて疑わない模範的な優等生達が、新入社員群を形成することになります。

 

こうして、企業は「情熱的でクリエイティブな創業者」「柔軟性の高い管理職」「真面目さだけが取り柄の新入社員」という3種類の人材が織りなす混沌とした状態のときに全盛期を迎え、そして創業者世代、つぎにはみ出し者世代が引退し、全社が受身のイエスマン一色に染まったときに、例外なく衰退期へ突入することになる。

 

業種業態に関わらず、今まで見てきた倒産企業は、ほとんど同じ轍を踏むように、このパターンを歩んでいます。

 

組織の多様性を維持するための具体的な方針があるか

今さら言うまでもないことですが、組織というのは、様々な価値観を持つ人がメンバーで構成されているときが、ギクシャクしながらも、一番活力が高い状態です。

 

しかし、名を成し繁栄している企業に、あとから寄り添ってくる人間は、「なにかおいしい話がある」ということに釣られて集まってくる私利私欲追求型の特質を持っているから、その意味において均質性が高まります。

 

なにも私利私欲型がいけないと言っているのではなく、組織にとって、どんな特質であろうが均質性が高まることの危うさを指摘しているのです。

 

創業者のような自分のアイデアを試したくて仕方がない人ばかりでも、はみ出し者のようにデタラメな要素が多い人ばかりでも、「だけしかいない」ということになると、組織は立ちゆかなくなります。

 

歴史が証明していることは、あらゆる組織は、多様性を維持しているときに栄え、繁栄しているという事実ゆえに均質的な個体を呼び寄せ、結果的に組織としての多様性を失って滅びる、ということです。

 

そんなこと言われなくても分かっている「勉強のできる人達」がたくさんいる大企業は、もちろん人材採用において「多様性」とか「個性」とか「ダイバーシティ」という用語を多用しています。

 

でも、そもそも自分が「サクセスしている企業」を選好するという均質性を持って就職活動を行い、めでたく就職したにも関わらず、今さら当の本人が多様性などと口にしただけで組織全体が罹患した病を癒やすことは、現実問題としては相当に難しいはずです。

 

大企業の話はともかくとして、このことから分かることは、「うちは大企業ではないから、なかなか人が集まらなくて・・・」と嘆いている中小企業の社長は、それほど悲観的にならなくてもいいということです。

 

なぜなら、看板に引き寄せられてくる人物でないからこそ、人材の多様性を確保できる可能性があるからです。

 

岡野工業さんのように「先着順採用」とか「一年間は先輩の仕事を見ているだけで教えない」というような「やり方」は、それだけ真似をして意味はありませんが、人材の多様性を確保するために考え抜くことの重要性は理解できるはずです。

 

資金繰りが忙しく、「即戦力になる人物が欲しい」という企業では難しいですが、小さな巨人企業として、人材採用について一貫性のあるブレない方針を確立することが、経営者として極めて重要な仕事であることを改めて胸に刻み、今日から早速取りかかることを是非勧めます。