「わかりやすい話」ができる人はテーマを深く理解している

難しい内容を分かりやすい話にできる人ほど、優れた能力を持っているものです。

 

反対に、簡単な話をあえて難しくする人も世の中にはいますが・・・

 

「わかりやすい話」のためには、語彙力とか表現力といった言語スキルは当然のこととして、それ以前に話のテーマを的確に理解している必要があります。

 

本質を理解しているからこそ、言葉づかいが分かりやすだけではなく、言い替える、例え話をする、といった柔軟な表現ができるようになります。

 

また、全体から部分へと展開する構成を取り入れることで、難しい話を分かりやすくしていきます。

 

「単純な話」ができる人は仕事ができる

わかりやすい話と似ている話として「単純な話」があります。

 

単純な話ができるかどうかは、仕事が「できる」か「できないか」と密接に関わっています。

 

仕事が「できる」か「できない」は、問題に直面した時どう対処するかの違いを見れば分かります。

 

仕事ができる人は、問題や障害に直面するとつぎのような手順により解決を図ります。

① 事象を「因果関係」「相関関係」「時系列」などの視点で分析し、それを構成している要素に分解する。

② 事象の構成要素の中から、問題を引き起こしている大元の原因を探り当てる。

③ 行動の優先順位を付けて、重要なことから先に着手する。

 

問題を分解して、「ここを改善すると一番効果が大きい」と思われるポイントを見つけてすぐに行動に移す。こういう仕事の進め方が身に付いている人ほど仕事ができることになります。

 

この仕事の進め方をするときには、常に「ものごとをシンプルにする」という能力が強く求められます。

 

身近な人の中で、「この人って優秀だな」とか「あの人って頭がいいな」と感じる人は必ず、万人には複雑に見えることを「簡単に」見せてくれます。

 

不思議と人は、「こんなこと簡単だ!」という言葉を力強く語る人の出現を常に求めているし、その言葉を口にする人を頼もしく思い、すんなりと信用してしまいます。

 

だから、世の中のコンサルタントも自分の力量をクライアントに誇示するために、「問題はシンプルで、解決することは簡単だ!」と言い切るようにしています。

 

なぜ問題をシンプルにし過ぎるのは危険なのか

しかし、問題をシンプルにし過ぎることには、危険を伴います。

 

最近の政治的、経済的、社会的問題の多くは、どこかで「思考停止」が起きたため発生していますが、問題をシンプルにし過ぎると思考停止が起きる可能性が高まります。

 

例えば、就労環境が過酷なブラック企業の存在は許されず是正されるべきですが、ブラック企業反対派の考え方はシンプルです。

 

「ブラック企業問題をなくすのは簡単だ。ブラック企業がなくなればいい」という論理だからです。

 

不当労働を容認する気は全くありませんが、だからと言って、実名批判を繰り広げて当の企業を商売を妨害し倒産に追い込めば、ブラック企業問題は解決するのでしょうか。

 

それでは「犯罪をなくすのは簡単だ。犯罪者がいなくなればいい」と、言っているのと同じです。

 

「問題はきわめて複雑であり、困難である。どこから手を着けていいか、よく分からないぐらい複雑かつ困難である」

 

先ずは、こういう現状認識を共有し、相応の覚悟を決めないことには話は始まりません。

 

なぜ複雑な問題を簡単な問題にすり替えることが危険なのか

同様に、企業が直面している問題は、簡単ではない複雑な問題ばかりです。

 

複雑というのは、一つ一つはたいした害がないようなささやか原因が無数に絡み合って、危機的状況が現れているということです。

 

問題をさらにややこしくしているのは、その細かい原因のかなりの部分が、「こんなの簡単に解決できる」という善意によって経営に導入された「簡単な解決策」の残骸であることなのです。

 

企業経営とは「時間」が「貨幣価値」を持つ世界であるために、問題が生じたときに「一気に解決する方法」を経営者が必死に探すことは当然のことです。

 

しかし、先ず行うべきことは、その問題が短期的に発生したのか、長期的に発生したのかを見極めることなのです。

 

長期的に発生した原因に根差している問題を短期的に解決することはありえません。

 

そして、企業における問題の多くは、長期的に発生した原因に拠るものが多いという実態を忘れてはいけません。

 

経営者が複雑な話をわかりやすい話にすることは望ましいことですが、安易に簡単な話にしてしまうことは問題を解決に結び付けずに、次の新たな問題を生む可能性があることに注意してください。

 

真に企業を発展させるためには、細かな改善の積み重ねをするだけではなく、ときとして複雑かつ困難な課題に真正面から向かい合って抜本的な取り組みが必要であることを肝に銘じていただきたい。