事業承継についての決断
後継者の決定と育成を遠い将来のことと考えている経営者
社長に求められる社長にしかできない仕事がいくつかありますが、事業承継あるいは後継者育成は、間違いなくその中の一つになります。
しかし、ほとんどの社長は目先の売上は気にしていますが、事業承継とか後継者育成というテーマになると、「まだ、その時期ではない」と口を揃えて言います。
1年前の調査になりますが、帝国データバンクが「事業承継に関する意識調査」を行った結果を発表しています。
2013.7.11付けで帝国データバンクのサイトに掲載されている調査結果報告は以下のとおりです。
事業承継を「最優先の経営問題」と捉えている企業は23.3%。「経営問題のひとつ」(63.0%)と合わせると、企業の86.3%が事業承継を経営問題として捉えている。
しかし、事業承継を進めるための計画については、「計画はない」が30.0%、「計画はあるが、まだ進めていない」が32.4%となり、6割超の企業が事業承継への取り組みを行っていない。「進めている」は27.6%にとどまった。
「事業承継計画を進めていない/計画がない」理由として、「まだ事業を譲る予定がない」が半数近くに達する。
(出典:帝国データバンク(http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p130702.html)
細かい数字は脇に置いて、7割方の経営者の意識は「事業承継についていつ考えるのか?」と聞かれたら「今じゃないでしょ」ということのようです。
人はなぜ問題を先送りにしたがるのか?
さて、話は変わりますが、夏休みが8月一杯で終わって3週間が経とうとしています。
1ヶ月以上と期間が長い夏休みには、学生にとって楽しい思い出がたくさん詰まっています。
でも一方で、夏休みの最終週は宿題をやっつけるのに必死になるという苦い思い出を合わせ持っている人も多いはずです。
我が身を振り返っても、宿題は夏休みの最終週が勝負でした。
なぜ、私を含めた多くの学生は夏休みの宿題を計画的にやらないで、先延ばしにしてしまうのでしょうか?
先延ばしの心理的分析といった難しい話をするまでもなく、理由は夏休みの宿題をやりたいと思わないことに尽きます。
それでは、事業承継について取り組むのが「今じゃないでしょ」と考えている多くの経営者の心理状況はどうなのでしょう。
この理由は、学生のそれとは違うと思います。
学生にとって夏休みの宿題とは「やらなければならいけどやりたくないこと」ですが、多くの経営者にとって事業承継対応は「やる必要がないからやらないこと」だからです。
「やる必要がない」は嘘で、面倒なことから目を反らしているだけ
その証拠が上記の帝国データバンクの調査結果にも示されています。
「事業承継計画を進めていない/計画がない」理由として、「まだ事業を譲る予定がない」が半数近くに達しているからです。
ここに大多数の経営者の誤解があります。
私は強く言いたい。「事業承継は相続ではない!」
しかし、本当のところ経営者はこのことを知っています。
その理由は、この調査結果を見ればわかります。
事業承継で苦労することは「後継者育成」が約6割で最多。
「従業員の理解」が約3割で第2位。
「後継者育成」や「従業員の理解」を進めるのためには、最低でも5年の時間が必要になります。
そんな時間がかかることを「まだ事業を譲る予定がない」という理由で先延ばしにしているのは逃避以外の何ものでもありません。
会社の株式相続について遺言していない場合のリスクを考えているか?
さらに事業承継について考えることを先延ばしにすることで発生する別の大きなリスクがあります。
このリスクは全ての経営者にあてはまるはずです。
考えたくないことですが、経営者が今日不慮の死を迎える可能性は常にあるのです。
日本の中小企業経営者は同時にオーナーでもありますが、現経営者が持っている会社の株式はトラブルの温床です。
特に遺言がない場合、会社の株式は法定相続人に引き継がれますが、複数の法定相続人がいる場合、持ち分によって株式が分割されるのではなく、全ての株式が法定相続人による共有名義になります。
こんな状況になると、誰かが事業を存続しようとしても利害の調整で揉めることが多く、企業自体が解体の危機に瀕します。
賢明なる社長ならば、事業承継について計画的に着手する時期に早いということがないことに気付くはずです。