1 女性に花をプレゼントする男性の割合は?

あなたは、女性に花を贈ったことがありますか?

 

などと急に聞かれても、多くの日本男児は答えに窮することでしょう。

 

「だいたい女性に花を贈るなどという行為は、キザな輩がすることで、謹厳実直を旨とする真っ当な男のすることではない!」と息巻く人もいるかもしれません。

 

実際のところ、プレゼントとして花を購入する男性の割合は、それほど多くないようです。

 

JFMA(日本フローラルマーケティング協会)という団体が、こんな調査結果を発表しています。

 

プレゼント用の花購入率 - 男性年齢別推移   
年代 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年
20代 51.9% 30.8% 36.5% 36.5% 32.7%
30代 61.5% 40.4% 42.3% 36.5% 40.4%
40代 42.3% 34.6% 34.6% 32.7% 32.7%
50代 34.6% 42.3% 21.2% 25.0% 30.8%
全年代 47.6% 37.0% 33.7% 32.7% 34.1%

 

この調査結果から読み取れる事実を整理してみます。

 

  1. 男性でプレゼント用の花を買う人の割合は、おおよそ3割強いる。
  2. 年代別に見ると、若い男は中高年の男より花を買う人の割合が多い。
  3. 年々購入割合が減少している。

 

細かい点はともかくとして、プレゼント用に花を買う男の割合は3割強で、残りの7割弱の男は花など買わないという全体像は、感覚的な認識と一致します。

 

ただし、この表だけでは、花をプレゼントする男の割合はわかっても、その目的についてまではわかりません。

 

そこで、勝手に想像力を逞しくして、花を買う意図を考えてみます。

 

30代がどの年次においても購入率が一番高いことと、男性の平均初婚年齢が30.5歳(2010年国勢調査)という事実を結び付けると、ひとつの仮説が立ちます。

 

プロポーズをする女性にプレゼントとして花を買い、結婚後も新婚ホヤホヤの時には記念日に花を贈ったであろう男でも、夫婦の契りを交わして10年もすると、奥方に花をプレゼントをしなくなる男の割合が10~50%の範囲で存在する。

 

いわゆる「釣った魚にはエサをやらない」ということでしょうか。

 

例外ケースを考慮すると、プレゼントとして花を贈る対象が配偶者ではなく、キャバクラ嬢という男も一定割合で間違いなくいるでしょう。

 

また、花は贈らないけど、貴金属やバッグを贈るという金満な男もいることでしょうから、あくまでも仮説に過ぎませんが、感覚的には納得ができるストーリーではあります。

 

なぜ、こんな話をしているかというと、単にモテ男の条件を考えたいからでではありません。

 

これからの時代のビジネスに必要な経営者の資質は、女性に花をプレゼントできることだと考えるからです。

 

その理由をこれから説明していきます。

 

2 ビジネスはたった2つのことから成り立っている

どんな種類のビジネスをしていようが、ビジネスを構成する要素は、煎じ詰めれば2つしかありません。

 

  1. 優れた商品・サービスを生み出すこと
  2. その商品・サービスの価値を相手に伝えること

 

いい商品やサービスを作り出すことには、どんな経営者でも心血を注いでいるはずです。

 

しかし、どんなにいい商品やサービスでも、その「よさ」が相手に伝わらなければ売れることはありません。

 

「そんなこと当たり前のことだ!」と反論したくなることでしょう。

 

でも業績が悪化した企業をいくつも見ていると、おおよそ3:1くらいの割合で、「伝える」方に問題があるのです。

 

もちろん商品やサービス自体に問題を抱えているケースもありますが、ほとんどの会社は真剣にモノづくりをしています。

 

伝え方に問題がある場合、さらにその原因は2つに分かれます。

 

  1. 価値を伝えること自体をほとんどしていない
  2. 価値を伝える努力はしているが、スペックなどの情報を伝えるだけで留まっている

 

特に古いタイプの経営者は、いいものさえ作れば結果はついてくると考えている人が多いので、商品開発には力を注ぐけれど、伝える努力をほとんどしていないという方が多い。

 

たしかに、一昔前はそれでよかった時代もありました。

 

しかし、今のように情報が氾濫している社会では、きちんと伝える努力をしないと、商品・サービスのよさは一向に伝わりません。

 

よさが伝わらなければ、価格競争に巻き込まれるか、そもそも買ってもらえないかという結果にしかなりません。

 

だからといって、機能の優位性やバリュー・フォア・マネーのアピールなどの情報提供をするだけでは十分ではありません。

 

同時に、その企業なり経営者自身が持っている自社の商品・サービスに対する「思い」を伝えることが不可欠です。

 

つまり、これからの時代、できる経営者とは合理性や効率性一辺倒ではダメで、感情のコミュニケーション力の高さが求められています。

 

感情のコミュニケーション力は、その人の感性に比例します。

 

では、感性を磨くためにはどうしたらよいのでしょうか。

 

日常の生活において、新たな経験を積極的にすることで、「こういうのって素晴らしい」とか「なんだかいいよね」という感覚を刺激することが、感情のコミュニケーション力を高めるためには絶対に必要になります。

 

一流の仕事や大自然に触れることは、最も実行しやすい方法です。

 

例えば、食事は栄養補給が目的だから「早い・安い・そこそこ旨い」で十分だという合理主義精神に貫かれたポリシーを持っている方がいますが、たまには投資と考えて、一流の寿司屋やレストランへ足を運ぶことは無駄ではないはずです。

 

また受身な態度で感じるだけではなく、能動的に自ら「こだわり」をもって手を動かすことも大切です。

 

例えば、コーヒー好きを自称しながら缶コーヒーを飲んでいるのは論外として、専門店で出されるコーヒーを賞味しているだけではなく、自分で旨い一杯をいれてみてはどうでしょう。

 

豆の種類と焙煎の深さを変え、手回しのミルで丁寧に豆を挽き、ネルドリップで丹念に抽出をするという手間をかけていれた一杯の珈琲を味わう素晴らしさを知ることは、ビジネスシーンにおいても必ず役に立ちます。

 

なぜなら、人は頭で納得しても、感情が動かなければ、その商品・サービスを購入しようとは思わないからです。

 

3 愛していることを伝えられる社長は仕事もできる

実は、経営と男女関係の本質は、非常に似通ったところがあります。

 

前節で述べましたが、経営としてすべきことは2つです。

 

「いい商品・サービスを作り出すこと」と「その価値を伝えること」です。

 

この2つがきちんとできていれば、会社の業績はよくなるし、働いている社員の満足度もあがります。

 

同様に、男女関係も大切なことは2つしかありません。

 

「愛していること」と「愛していると伝えること」の2つです。

 

男はよく、「いまさら好きなんて言わなくてもわかるだろう」とか「愛しているなんて軽々しく口にすべきではない」などと言います。

 

一方で、「わたしのことを愛している?」という問いかけを好んでする女性がたくさんいます。

 

この発言からわかることは、男性は相手を「愛している」という本質を重視し、女性はそれがきちんと「伝わること」を重視している違いがあるということです。

 

でも、本当はどちらも同じくらい大切なはずです。

 

けれど、もしどちらかをより意識しなければならないとしたら、伝える努力の方だと思います。

 

男女間の痴話喧嘩で、相手に対して愛情がまったくないことは、ほとんどありえないはずです。

 

本当は相手を大事に思っているし、大好きだけど、そうした思いが相手に伝わっていないことが、もめ事をさらに深刻にしてしまっていることが多いのです。

 

武士(もののふ)たる日本男児として、「おとこは黙って〇ッポロビール」的な気概をいつまでも大事にしている場合ではありません。

 

いまここで、「愛していること」と「愛していることを相手につたえる」ことは、まったく別のものであることを、はっきり自覚する必要があります。

 

ところが、ここからさらに厄介な話になります。

 

相手に愛していることを伝えたい場合、言葉で「愛している」と言っても、本当の気持ちは伝わらないのです。

 

商品の宣伝で、こんな優れています、こういう便利な点があります、とその商品の機能や美点を並べ立てても、それだけでは生活者の心をつかめないのと同じように、愛を伝える場合も、相手の感情を刺激する方法で行わなければ効果は薄い。

 

ちなみに、女性は男性から花を贈られると、80%以上が「嬉しい」と感じるという調査結果があります。

 

そういう意味で、女性に花を贈ることができる経営者は、愛していること以上に愛していることを伝えることの重要さを知ると同時に、愛を語るということは、ときに愛を語らないことであることを知っているがゆえに、優れた感情コミュニケーション力を持っていると言えます。

 

会社では自社の商品やサービスへの「思い」を「伝える」ことに日々努力しているのに、人生においては、一番身近な人に「思い」を「伝える」努力ができていない社長は、案外多いのではないでしょうか。

 

どうも女性に愛を伝えることは、自社の商品のよさを伝えることより難しいと言えそうです。

 

だからこそ、女性にきちんと愛を伝えられる社長は、きっとできる経営者なのです。

 

4 伝わらない言葉と増すデザインの重要性

『星の王子さま』(サン=テグジュペリ著)の中でキツネは、「一番大切なことは目に見えない」「心でないと見えない」と語っていますが、実に深い意味があります。

 

人間は、すべての生物の中で唯一<言葉>を使うことができるがゆえに、高度なコミュニケーション能力を持った生き物のはずです。

 

でも、多くの諍い(いさかい)が、「何を言ったか」よりも「その言い方が気に入らない」ことに端を発していることから考えると、人間が一番コミュニケーションに問題を抱えている生き物なのかもしれません。

 

人間以外の動物のコミュニケーションに「誤解が生じた」とか「鳴き方がムカツク」などという問題が発生している様子はありません。

 

だから、人生においてもビジネスにおいても、「言葉は伝わらないもの」という冷徹な達観を持つことが必要です。

 

しかし、その見方は言葉自体を否定するわけではありません。

 

かつてココ・シャネルが「女のからだを自由にする」と宣言して、コルセットを女性の服から解放し、ビル・ゲイツが「すべてのデスクと、すべての家庭にコンピューターを」という使命を宣したことから、その言葉が現実になっていったことを、みなさんもよく知っているはずです。

 

新しい時代、新しい組織、新しい商品、熱狂的なストーリーの始まりは、いつだって魅力的なワン・センテンスだったのです。

 

ビジネスで言葉が求められるのは、できあがったプロダクトや組織をうまい具合に「伝え」「よく見せる」ときにも重要ですが、より重要な言葉の意義は、化粧をほどこすためではなく、「ものごとの本質を描き出す新たな骨格を形成する」ためにこそあるはずです。

 

かつて哲学者ヴィトゲンシュタインは言葉と思考の関係について「私の言語の限界が私の世界を意味する」と語りました。

 

言葉の機能は、コミュニケーションの手段としてだけではなく、言語は思考そのものと同義なのです。

 

つまり、現実を言葉にするのではなく、言葉に合わせて現実が変わることを知ることは、言葉と未来の関係を考えるうえで非常に示唆的です。

 

まだ誰も見ていない、実態のない創造的な未来。それを言葉にすることで、現実を意志に引き寄せていくことができます。

 

ですから、最初に言葉をつくり、それを伝えることはいの一番に重要です。

 

でも、いかに発信者が「これは素晴らしい」と論理的にかつ情熱的に説いても、生活者が納得するだけでも、同感するだけでもなく、共感を抱くようになれなければ、行動が伴わないために事業は成功しません。

 

つまり、メッセージの発信には「受け手発想」が欠かせないのです。

 

そして、この「受け手発想に立って情報価値を高める」うえで、威力を発揮するのが言葉ではないイメージとしての「デザイン」ということになります。

 

女性に、「愛している」という「言葉」だけでは足りず、花を贈るという「かたち」が必要なのと同じことです。

 

これからの時代の経営者は、「いい商品・サービスをつくる」ことは当然として、その価値を「言葉」と「デザイン」によって発信することで、生活者の共感を引き出すという感情コミュニケーション力を個人および組織の能力として最重視していく必要があります。

 

動的安定経営の実現をするにあたっては、暗黙知を言葉にすることは当然行いますが、顧客・社員をはじめとしたステークホルダー全員の共感を得るために、デザインの力を活かすことが一つの特長になっている理由は、ここにあります。

 

先ずは、今日帰りがけに、花を買って帰ってはどうでしょうか。