トップ営業マンを自負する社長の弱点

日本の首相が外遊をする際に、企業経営者が同行することがよくあります。当然、訪問先の国で、首相自ら売り込みをかけています。

 

一国のトップが営業をかけるくらいですから、一企業の社長がトップの営業マンであれ、ということが広く世の中で信じられています。

 

しかし、それは間違いです。むしろ、社長が営業をしてはなりません。

 

もちろん、社長に豊富な営業経験や培われた営業力があるに越したことはありません。

 

でも、社長の営業力に依存しなければ売上を確保できないような会社は、継続して繁栄していくことはできません。

 

トップ営業に精を出してしまう社長は、その理由づけとして、「営業マンがだらしない」とか「陣頭指揮をとることで、現場を鼓舞している」というようことを口にします。

 

でも本当は、それが一番楽だからでしょう。

 

原価が千円の商品を十万円で月に千個売ることができる営業マンが10人いれば、その会社は他のどんな商品を扱っても儲かります。

 

しかし実際には、原価千円の商品を、下手をしたら800円でしか売れない営業マンがほとんど、というのが現実です。

 

だから社長は、売れない営業マンしかいないという前提で、経営をする必要があります。

 

つまり社長の仕事とは、売れない営業マンでも売れる商品と戦略を考えることに尽きます。

 

トップ営業マンの実績を自負する社長は、無意識に売上は営業マンがつくるものだと考えています。

 

だから、売上が伸びないのは、営業力が不足しているからと結論付けます。

 

このような社長は、業績が低迷すると、真っ先に営業力強化を行います。

 

営業マンの増強、教育、ノルマ管理、そして気合い注入のための決起集会とやることの相場は決まっています。

 

もちろん、営業力を否定するわけではありません。

 

しかし、営業力という武器に依存した会社は、遅かれ早かれ業績の壁にぶち当たります。

 

ひと昔前は、営業力がモノをいうことがもあったかもしれませんが、いまの顧客は営業力で売られることを嫌うという変化を見逃してはいけません。

 

社長は営業力よりマーケティング力こそ身につけるべき

ビジネスの世界で、「マーケティング」という言葉を使うことが多くても、その定義が曖昧なままということがよくあります。

 

そこで、おおくの人が当たり前のように使っている「マーケティング」という言葉の定義を明確にしておきます。

 

辞書的な定義は、世の中にたくさん流布しているので調べてもらうとして、簡単に言い表すと「商品を購入する顧客を見つけ出す活動」になります。

 

例えば、街で女性に声をかけてナンパをする状況を考えてみてください。

 

最初のハードルは、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」とばかりに、手当たり次第に街行く女性に声を掛けられるかどうかが、その後の命運を分けることになります。

 

拒絶されることを恐れて、声を掛けることができない男は、どんなに頭が良くてもナンパが成功することはあり得ません。

 

つぎに、100の声掛けをして、99の失敗と1の成功を手にした後に、何を学ぶかがナンパの成功率を上げられるかどうかの境目になるはずです。

 

並みの男は、ナンパ成功の秘訣をこう語るでしょう。

 

「結局はたくさん声を掛けた者の勝ち」
「そのためには、メンタルが強くないとね」
「押しの強さあるのみ!」

 

一方、できる男は、ナンパ成功の秘訣をこう語るでしょう。

 

「最初からイケそうな女性を見分けること」
「特に、ほかの奴ではダメでも、俺にはOKしてくれそうなタイプの子を見逃さないこと」

 

聡明な読者は、もうお気付きのとおり、並みの男は営業力だけに頼り、できる男はマーケティング力を持っているのです。

 

マーケティング的な用語を使って、できる男のしていることを俗っぽく説明するとこうなります。

 

「自らのUSPを明らかにして、競合が少ないポジショニングを定め、ターゲット・セグメンテーションにアプローチする」

 

世の中全ての人や会社が、潜在的見込客にはなり得ません。

 

どんなに説得しても買ってくれない相手がいるし、実際のところ、買ってくれない相手の方が圧倒的に多いのです。

 

その反面、買ってくれる相手を見つけ出すことさえできれば、クロージングすることは簡単です。

 

だから、マーケティングとは「商品を購入する顧客を見つけ出す活動」と位置付けられるのです。

 

ただし、マーケティングの一般論に留まらないことが大切です。

 

自社にとって、「商品が売れるまでの流れの中で、どの部分にもっとも力を入れれば売上が伸びるのか」ということを経営者としてきちんと把握する必要があります。

 

それが、あなたの会社にとっての「マーケティング」なのです。

 

しかし、それができている社長は、実際にはとても少ない。

 

だからこそ、マーケティングをどのように定義しているかで、会社の特徴や社長の能力が分かってしまうのです。

 

あなたの会社にとって、マーケティングとは何を意味するのでしょうか?