ブランド戦略の必要条件

観光や旅行に関わるビジネスにおいて、「ブランド」というキーワードが、今後ますます重要視されるようになるだろう。

ところが、日経リサーチのブランド戦略サーベイ総合評価ランキング2018を見ると、旅行会社の名前は100位どころか200位までの中にも見当たらない。これを見ると、旅行会社の企業としてのブランド力は極めて低いことになる。

その原因は、企業ブランドよりも商品シリーズ名をブランドとして捉え、企業ブランド力向上よりも個別の商品シリーズのブランドづくりを優先してきた旅行会社の姿勢にある。しかし、商品シリーズ名には強いブランド力が備わったかというと、コンシューマー業界のようにブランド自体が売買対象になるほど強いブランドは存在していない。

このように、ブランドという言葉だけが一人歩きをしているだけで、ブランドが高い価値を持ち、差別化要因となり競争優位を築けていないのは、日本企業に共通した課題で、旅行会社も例外ではない。

アパレル業界は、その最右翼に位置するが、売上至上主義で次々とブランドを起ち上げ、3000億円規模の売上高で100ものブランドを擁する会社すらある。ブランドが多すぎれば、ブランド・マネジメントが不在となる。しかも少ない売上高しか確保出来ないため、ブランド戦略立案が出来ない悪循環に陥いることになる。

旅行会社も原点回帰し、「ブランド戦略とはなにか?」をあらためて考える必要がある。多くの旅行会社で、トレードマーク管理やブランド単位でのマーケティングは実行しているはずだが、ブランド価値を高めるマネジメントを行っているところは少ない。

ブランドによる差別化を行うためには、ブランド価値を高めることを経営における最優先課題に据える必要があるが、これまでの売上至上主義のまま、「ブランド価値が上がれば、強いブランドになり、そのブランドが売れる」という単純な因果関係でブランドを捉えている場合が多い。

日本企業のマーケの特徴として、短寿命のヒット商品を打ち出しては、スクラップを繰り返す傾向が強いが、ブランドとはブランドロイヤリティという言葉が象徴するように、ロングセラーをつくり出す仕組みと理解すべきだ。

また、常にブランド価値を高めるとは、意思決定をその軸で一貫して行うことを意味する。その結果、短期的な売上や利益に反したり、流通管理という考え方とも衝突したりする可能性が出てくる。

今後、BTM(Business Travel Management)やMICE(Meeting・Incentive・Convention・Exhibition)にも注力するにあたっては、商品ブランドではなく企業ブランド価値の向上が必要になる。その際、売上の短期的追求とブランド構築という相反する課題に、全社レベルで取り組むことは避けられず、経営トップがブランドにコミットすることが、ブランド戦略を成り立たせる必要条件になるだろう。

※ 本記事は、『週刊トラベルジャーナル』2019年7月15日号に寄稿した連載コラム「観光経営の未来シナリオ」第4の記事をベースに一部加筆修正をしたものです。