グローバル化の意味

観光経営の未来を語るときに不可欠な言葉の一つであるグローバル化(グローバリゼーション)は、2つの異なった意味を持っている。

一つ目は、国際化が地球規模に拡大したことを意味するグローバル化だ。例えば、米国へ進出は国際化の課題だが、米州、欧州、アジアと広範囲に市場を拡大することはグローバル化の課題になる。

二つ目は、グローバリズムの実現を目指すグローバル化だ。これは、単に国内から広く国外へ進出するだけではなく、同一のビジネスモデルを水平展開し、経済活動の効率を徹底的に追求することを目的とする。

一足先にグローバル化を達成している世界のツーリズムビジネスは、二つ目のグローバル化に軸足を置いている。OTA系のエクスペディア、BTM系のカールソン・ワゴンリー・トラベル、垂直統合系のTUIなどビジネスモデルに違いはあっても、均一サービスの提供によりで効率利益を極大化する戦略という点で共通している。今後ともグローバリズムの推進を伴うグローバル化が世界の主流になることは、最近トラベルサービスを開始したグーグルやインドでパイロットケースとして航空機チケット販売に進出したアマゾンの動きを見れば明らかだ。

一方、日本の旅行会社がグローバル化を口にするとき、規模の大小を問わず、一つ目のグローバル化を意味していることが多い。この意味でのグローバル化が進行していることは事実だが、経済のグローバル化とは、民主主義が世界的に拡大している状況に附帯して同時進行している現象に過ぎない。したがって、日本の旅行会社のグローバル化は、必然的への対応に追われているだけのことが多く、競合に出し抜かれないようキリを打つ意味はあっても、差別化を生み出す競争優位の戦略とは言えない。

だが、日本の旅行会社がグローバリズムを追求したビジネスを今後志向すべきと問われると、答はNOになる。世界的なメガエージェンシーに、規模において圧倒的な差をつけられているうえ、水平展開を図るに値するビジネスモデルを持たない日本の旅行会社が、この分野で成功する可能性は低いからだ。

しかし、一つ目の意味でのグローバル化を戦略的に進める道は残されている。この場合、グローバリズムを追求しない以上、日本でのビジネスをそのまま他国へ持ち込むのではなく、その国の文化や慣習と摩擦を起こしながら、ローカライズされた独自のビジネスを作りあげるプロセスが必須になるだろう。その際、前提として不可欠なものは、磨き上げられた自社のビジネスの強みだ。そのためには満艦飾なビジネスを捨て、得意やこだわりに基づいて特定のエリアや分野に絞り込むことが求められる。したがって、グローバル化の第一歩は、国内で同一のビジネスモデルで価格競争をする状況から抜け出し、強みで勝負するビジネスへ転換することなのだ。

※ 本記事は、『週刊トラベルジャーナル』2019年6月17日号に寄稿した連載コラム「観光経営の未来シナリオ」の記事をベースに一部加筆修正をしたものです。