中小企業の現状

1.減少を続ける事業者数

出典:中小企業庁2017年度版「中小企業経済白書」

中小企業者数は、1986年の533万者をピークに減少を続け、2014年には約29%減少して381万者となりました。

小規模事業者※1については、やはり1986年の477万者をピークに減少を続け、2014年には約32%減少して325万者となっています。

※1小規模事業者:製造業その他で従業員20人以下 商業・サービス業で従業員5人以下

業種別に見ると、特に製造業の減少幅が大きく、1986年の874,471者から2016年には453,810者になり、減少幅は48.1%で、ピーク時のほぼ半数に減ったことになります。

2.高齢化する経営者

〇上がり続ける社長の平均年齢

出典:帝国データバンク2018年度「全国社長年齢分析」

上のグラフは2016年までのの推移が示されていますが、2017年はさらに社長の平均年齢が上がり、59.5 歳(前年比+0.2 歳)となり過去最高を更新しています。

折れ線グラフで示されている「社長交代率」を見ると、1990年代に5%近くあったものが、バブル景気の崩壊とともに一気に3%台に下がり、その後4%台前半まで回復しましたが、リーマンショック後再び3%台に逆戻りしていmす。その後、徐々に上昇をしているものの、現在でも4%程度に留まっています。

どうやら、社長交代は、景気の良い悪いに影響を受ける傾向があるようです。

このように社長の平均年齢が年々高くなっていくのは、社長交代が進まず、高齢社長が増加しているからです。

そこで、65歳以上の経営者割合を具体的に見てみます。

〇上がり続ける65歳以上の経営者割合

出典:中小企業庁2016年度版「中小企業白書」

2015年で、65歳以上の経営者が全体に占める割合は、製造業で40.8%、非製造業で37.1%に達しています。

この状況の原因を「日本全体が高齢化しているからだ」と言って済ませるわけにはいきません。

なぜなら、総人口に占める65歳以上の方の割合は27.3%に過ぎないからです。

この数字と比べると、65歳以上の経営者の割合がはるかに高いことがわかります。

2017年度版で中小企業白書」で経営者の年齢分布を見ると、1995年では、経営者年齢のピークは47歳でしたが、2000年代に入ると年齢層のピークがシフトし、2015年ではピークの年齢は66歳となっています。

20年間で経営者のピーク年齢が19歳上がった事実を見ると、20年前社長だった人がそのまま現在も社長である可能性が高いと言えます。

さらに、経営者が高齢化している状況を「業種別」に見てみます。

〇業種別に見た社長の平均年齢の高低

出典:帝国データバンク2018年度「全国社長年齢分析」

平均年齢が高い業種は、「不動産業関連」か「衰退が大きい業種」ということになります。

反対に、平均年齢が低い業種は、「介護福祉業」「IT関連業」になります。介護福祉業もIT関連業も30年前にはその数が少なく、2000年代に入って起業した会社が多いために、経営者の平均年齢が低くなっていると考えられます。

また、「保育所」は、待機児童が問題になっていることから分かるように、需要が大きく新規開設が多い業種です。美容業は、美容師の数も店舗数も増え続けて「オーバーストア化」している業種なので、新規参入者が多い分、経営者の年齢が低いと考えられます。

先ほども述べましたが、経営者が高齢化しているということは、同じ人物が長年社長を務めていることを意味します。

そして、企業数が減少傾向にある根底には、高齢化した経営者が次の世代に会社を引き継がずに「廃業」を選択している状況があります。

では、「休業」「廃業」の実態はどうなっているのでしょうか。

3.休廃業・解散の実態

〇減少する倒産件数・増加する廃業件数

出典:帝国データバンク2017年度「全国休廃業・解散の動向調査」

「休業」「廃業」「解散」という3つの言葉が出てきますが、法的に厳密な定義がないので、ここではあまりその違いを気にしなくても大丈夫です。

「倒産」が債務超過状態の企業の解散・清算処理なのに対して、資産が超過している企業が事業や企業活動そのものを止めることであると理解しておけば十分です。

2017 年(1~12 月)の「休廃業・解散」は、2 万 4400 件(前年比 2.2%減)で、前年(2 万 4957 件)を 557 件下回り、2 年ぶりの前年比減少となりました。

直近のピークは、リーマン・ショッ クが発生した 2008 年の 2 万 7306 件となっています。

その後増減を繰り返しながら減少傾向で推移していたなか、 2016 年に 4 年ぶりの前年比増加に転じたが、2017 年は再び前年を下回りました。

いずれにしても、毎年倒産する企業の倍以上の会社が「休廃業・解散」をしていることがわかります。2017年については、「倒産」件数 8376 件の約 2.9 倍にのぼっています。

つぎに、業種という切り口で休廃業・解散の実態を見てみましょう。

〇業種別の休廃業・解散の実態

出典:中小企業庁2017年度版「中小企業経済白書」

このグラフを見ると分かるように、業種によって廃業が多い少ないの違いがあります。

また、このグラフでは、「廃業率」をY軸「開業率」をX軸にして、業種毎の特徴がわかるようにしてあります。球体の大きさは、その業種に属する企業数が多いほど大きくなっています。

飲食業のような新規参入のハードルが低い業種は、新たに開業する企業と止めていく企業の両方が多く、建設業は、1社潰れると2社増えるという業種ですから、廃業する企業も多いけれど、それ以上に新しい企業が増えています。

建設業に次いで企業数が多い製造業は、廃業による企業数の減少が進んでいる業種と言えます。同様な傾向が卸売業と小売業にも見られます。

ただし、このグラフでは「倒産した企業の数」はカウントされていません。

昨年の倒産件数は8400~500件でしたが、1000件を超えている業種は、多い順に建設業・卸売業・小売業・製造業となっているので、倒産企業数を加えた広い意味でのこの4業種についての消滅企業はもっと上の方になると考えられます。

次に、もう少し細かい業種レベルで、廃業の実態を見てみましょう。

〇業種細分類別休廃業・解散率

出典:帝国データバンク2017年度「全国休廃業・解散の動向調査」

この表を見ると、ネットによる通販市場が拡大しているために、街の商店のような業種の廃業が多い傾向があることに気付きます。

後継者を立て、その後継者を育てて、事業を承継していこうとする場合、廃業率が高い業種の場合、昔と同じことをし続けるだけでは、遅かれ早かれ事業が立ち行かなくなる可能性が高いことを意味します。

昔と同じことをし続けていい業種は一つとしてありませんが、廃業率が高い業種の場合、事業を生まれ変わらせていくための難易度が高いことになります。

次に、日本における廃業と開業の問題をより大きなレベルで考えてみます。

そうすると、そもそも開業率も廃業率も低いという別の大きな問題が見えてきます。

4.開業率・廃業率の国際比較

出典:中小企業庁サイト

イタリアとカナダを除くG7に属する先進国の開業率と廃業率が、このグラフには示されています。

どの国も日本より開業率も廃業率も高い新陳代謝が活発な状況を示していますが、中でもアメリカは開業率が14.3%で廃業率が9.4%、ドイツは開業率が12.4%で廃業率が5.4%と極めて高い数値となっています。

一方で日本は、開業率も廃業率も低空飛行のままです。

最近のマスコミや専門家の論調は、「経営者の高齢化が進む一方だが、後継者がいないために廃業する企業が多い状況を改善するために、税制を変える必要があるとかM&Aを推進するべきだ」となっています。

しかし、この国際比較を見ればわかりますが、日本の廃業率は諸外国に比べて最低レベルです。ですから、根本的な問題は開業率が低いことなのです。

後継者が不在という問題も、根っ子の部分は同じところにあると考えています。

問題は「なぜなのか?」という理由ですが、もう少し先であらためてこのテーマに触れるので、ここではあまり深入りせずに事実だけを確認しておきます。

次に、廃業する企業が挙げている「理由」について、見ていきます。

5.廃業の理由

出典:2016年日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関する調査」

こういうデータは鵜呑みにせずに、行間を読み解く必要があります。

「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」が1位の理由ですが、なぜ一代限りにしようと考えたのでしょうか?

おそらく「事業に将来性がない」からでしょう。

「事業に将来性がない」ことが根本的な原因となって、「こどもに継ぐ意思がなく」「適当な後継者が見つからず」、そして「若い従業員の確保が難しく、事業の継続が見込めない」という理由が派生していると考えるのが自然だと思います。

一方で、廃業する企業の約半分は「黒字企業」であるというデータがあります。この事実を前提にすると、事業に将来性がないから廃業するのという説明は矛盾します。

しかし、中小企業を黒字にするか赤字にするかは、役員報酬を増やすか減らすかで大幅に調整が可能です。

まして、金融機関から借入金があり、しかも折り返しの融資が定期的に必要な場合は、赤字決算にできません。

たとえ黒字だったとして、経営の真の実態は経営者自身が一番知っているので、やはり「事業に将来性がない」から「自分の代限りにしよう」と考えているのが一番の理由ではないでしょうか。

しかし、「事業に将来性があるかどうか」は、あくまでも現経営者の今までのやり方考え方を前提にした判断に過ぎません。

現経営者には、事業を生まれ変わらせることは難しいかもしれないけれど、新たな人材であれば立て直せる可能性があるとも言えます。

つまり、優秀な後継者がいれば廃業しない方がいいけれど、後継者はいるけれどあまり優秀でなければ、廃業した方がいいかもしれないのです。

つぎに、一応確認の意味で、廃業した企業の経営者の年齢についての実態を見てみます。

〇休廃業・解散する企業経営者の年齢

出典:帝国データバンク2017年度「全国休廃業・解散の動向調査」

2017年は、経営者が70 代の廃業が、 6634 件(構成比 32.5%)で最多となっています。

次いで、「60 代」の 6452件(同 31.7%)となり、前年まで最多を記録していた「60 代」が「70 代」と入れ替わったことになります。

また、廃業した企業の経営者の平均年齢は 66.7 歳でした。

件数・構成比ともに、前年に比べ70 代と80 歳以上の 2つの年代が増加しています。その2つの年代を合算すると、70 代以上が全体の 40.0%以上を占めており、高齢代表者の休廃業・解散が増加していることになります。

新たな転身をするために現事業や会社を畳むのではなく、自分の頑張れるところまで会社を続けて、最後は誰にも引き渡さずに会社を畳む傾向が強くなっていることが感じられます。

次に、少し話を戻します。

先ほど、諸外国に比べて日本の開業率も廃業率も低い事実を見ました。そして、開業率の低さこそが一番の問題だという指摘をしました。

そこで、開業率の低さを考えるために役立つ「起業意識の国際比較」のデータを見てみます。

6.起業意識の国際比較

出典:中小企業庁サイト

左側のレーダーグラフは、こう読み解くことが出来ます。

「周囲に起業家がいない」し「起業のチャンスもなく」「起業のための知識・能力・経験」がないうえに、「苦労して起業して成功しても、社会的な地位が得られるとは限らない」ので「起業することが望ましいとは思わない」人が日本には多い。

「周囲に起業家がいる」、「周囲に起業に有利な機会がある」、「起業するために必要な知識、能力、経験がある」の三つの項目に着目し、三つの項目いずれについても「該当しない」と回答した人を、「起業無関心者」と定義しています。右のグラフは、その起業無関心者の国際比較をしています。

過去の推移を見ても、企業無関心者の割合は日本だけ増える一方であることが分かります。

既にある企業を引き継ぐ「後継者」と、一から企業を起ち上げる「起業家」は違う部分も多いですが、スタート地点が違うだけで経営者としての仕事をするという意味では共通している部分も多いと言えます。

現在、多くの企業が直面している後継者不在の問題は、日本人の起業意識の低さとは無縁ではありません

つぎに、後継者不在と言われている状況を確認してみましょう。

後継者不在の状況

〇全体の3分の2で後継者不在

出典:帝国データバンク2017年「後継者問題に関する企業の実態調査」

全体の3分の2に及ぶ企業で後継者が不在であり、2011年から2017年にかけて後継者不在率の推移を見ると、65.9%から66.5%と僅かではありますが増加傾向にあります。

さらに現社長の年代別に後継者不在率を見ると、30代以下の若い世代で後継者不在率が90%を超えるのは不思議ではありませんが、60代で50%以上、70代で40%以上の企業において後継者不在となっています。

つぎに、後継者不在の状況を「業種別」「規模別」で見てみましょう。

〇業種別で見る後継者不在率

出典:帝国データバンク2017年「後継者問題に関する企業の実態調査」

業種別で後継者不在率を見ると、サービス業、建設業、不動産業、小売業、卸売業の順に、後継者不在率が高くなっています。

また、企業の規模が小さいほど、後継者不在率が高いことがわかります。

これだけ後継者不在の企業が多いと、事業承継が行われずに、廃業する企業が増えているのは当然の結果と言えます。

では、なぜこれほどまで多くの企業で後継者が不在という問題が生じているのでしょうか。

次に、その理由について見ていきます。

後継者不在についての表向き理由

特殊な事情を除くと、後継者不在の一般的な理由は、次のようなことに集約されます。

  • 子息がそもそもいない。
  • 子息はいるが、継ぐ意志がない。
  • 親族以外を候補者にしたくても、借入金の個人保証が過大なうえに債務超過で、継ぎたがる人がいない。
  • 会社を継いでも責任が大きいだけで収入が見合わない。
  • 事業自体に将来性がない。

上記4つの理由は、私の経験や知見の中から導きだしたものですが、他の情報源で調べてみても、似たり寄ったりの理由が出てきますが、不思議なことに、後継者不在の原因について明確に分析された結果は見当たりません。

つまり、様々な調査報告書は存在していても、後継者が不在である理由を「適当な候補者が見当たらないから」というような同語反復で済ましていることが多いのです。

同語反復とは、「同じことを繰り返して言う」ことです。例えば「雨の日は天気が悪い」とか「力とはパワー」と言ったところで、何の意味もありません。

だから、後継者不在問題が解決することなく悪化する一方なのは、きちんとした原因分析が行なったうえで、有効な対策を打っていないことに原因があると思います。

「子息がそもそもいない」が同族承継にこだわりたいというならば、養子縁組が解決のための課題でしょう。

また、「子息はいるが、継ぐ意志がない」とか、「親族以外に継がすには、経済的負担が大きい」とか、「経営者になって責任は大きくなるが収入が見合わない」とか、「事業自体に将来性がない」といった理由は、後継者の問題以前に、現在の経営のあり方をどう変えるかという課題に置き換えない限り、解決することはありません。

さらに、現経営者が早い時期に後継者を決めたがらない傾向があることが、いざ後継者を探そうとしても人がいないという結果を生んでいる大きな原因になっています。

次に、その点について見ていきます。

現経営者がいつまでも決めたがらない後継者

出典:中小企業庁2013年度版「中小企業白書」

2013年と少し古いデータですが、後継者が決まっていない理由として、「現時点でまだ決める必要がない」が、50代で40%、60代で32.6%、70代になっても23.9%もいます。

もちろん、50代、60代、70代と年齢が上がるに従って、その割合は減っていますが、今度は「適当な後継者が見つからない」という理由が増えてきます。

それは当然の結果でしょう。自分が60代にも70代にもなって、後継者を見つけ始めても、そうそうすぐに見つかる可能性は低いわけですから。

「後継者はいるが本人が若い」という理由を、現経営者が70代になっても10.4%もの人が理由にしているのですが、後継者が何歳になったら若くないと思うのでしょうか。

また、「複数の後継者がいて絞り込めていない」という理由は、現経営者の年代が上がれば絞り込みが進んで少なくなっていくはずですが、なぜ年代が上がるに従って割合が増えていくのでしょうか。

同様に、「後継候補者はいるが、本人が承諾していない」という理由も、時間をかけて話しを積み重ねることで減っていくならわかりますが、どうして増えていくのでしょうか。

ここに、実は現経営者が後継者の決定を先送りにしているうちに、事態がどんどん悪化している状況が示されているのです。

では、なぜ、現経営者は早期に後継者を決めたがらないのでしょうか?

現経営者が後継者を決めたがらない理由

これについても、私の経験と知見をベースに考えると、以下の4つの理由が出てきます。

  • 事業承継を「相続」の問題と考えている
  • 自分が衰えたとは思いたくない
  • 自分の生きがいがなくなる
  • 辞めた後の生活が不安である

事業承継を相続に伴う「株式の譲渡」の問題だと考えている経営者が多いのが実態です。そのため、なるべく無税で株式譲渡ができる方法が興味の中心になり、後継者の人選や事業を引き継ぐ時期について深く考えていない人が多い。

経営者は、普通の人以上に元気な人が多いので、後継者に引き継ぐのは自分が衰えたタイミングだと思うと、いつまでたっても本腰を入れて考えようとしません。

最近では、金融機関でもコンサルティング機能を発揮して事業承継を取引先との話題にすることが求められていますが、下手に話題にすると「私の経営手腕に問題があるということか!」と 社長の怒りを招くので慎重にならざるを得ないという話を聞きます。

特に創業社長は、好きで始めた事業であることが多いので、仕事から引退すると「生きがい」がなくなり毎日何をしたら良いかわからないのを嫌がっていることが多いことも理由の一つです。

さらに世知辛い話ではありますが、寿命が伸びて、しかも年金が怪しくなっているので、早い時期に引退をすると老後の生活が不安だという思いもあるでしょう。

こうした現経営者の気持ちは分からなくはありません。しかし、あえて厳しく言えば、すべて「エゴ」に過ぎないのです。

M&Aや事業承継税制では解決しない後継者不在問題

世の中では、後継者不在の企業が多い状況を商機と見て、事業承継マーケットが盛り上がっています。

士業、金融機関、コンサルタントなどがプレーヤーとして参加していますが、そこで力を入れているのはM&Aや事業承継税制に活用などの「出口戦略」だけです。

かつて潰れる企業数が多くなったので「中小企業金融円滑化法」を作って「とりあえず借入金の返済を猶予する」ことをしましたが、本当に必要な事業自体の改革は等閑にしたままなので、事業はジリ貧になる一方で、何とか資金繰りを持たせて生き長らえている企業が多いという現実があります。

目先の現象に反応して、問題の根本を解決する動きが棚上げされている状況は事業承継についても同じです。

政府は、事業承継が進まないのは、「税制の問題が大きい」として平成30年度から、以前からあった「事業承継税制」を(彼らに言わせると)さらにパワーアップして導入する予定です。

しかし、ざっくり言って、この税制で恩恵に預かれる企業は、株式評価額が1億円を超えるような相当優良かつ相応の規模の企業に限られます。

したがって、はるかに数が多い小規模かつ株式評価額1億円以下の企業には関係がない税制です。

ここまで見てきた事実からわかるように、そもそも後継者が不在である問題は、株式の譲渡が主たる課題ではありません。

また、中小企業のM&Aを新たなビジネスチャンスと考える人が多く、専業会社から金融機関まで取り扱いを強化しています。

でも、M&Aも事業承継における選択肢の1つではありますが、万能薬にはなりません。

なぜなら、M&Aに向く企業や業種は、1)資産がある 2)免許・資格がある 3)人手不足が深刻な業態に限られているからです。

実際のところ、日本M&Aセンターが2017年に取り扱った中小企業の業種別M&A実績の1位は調剤薬局です。以下、ソフトウェア開発業、貨物自動車運送業が続いています。

後継車不在問題の解決に向けて何をすべきか

「後継車不在問題の解決」という土俵に留まるのではなく、「日本経済の活力を維持するために何をすべきか」という一段上から目線で考えることが必要ではないでしょうか。

本稿で触れたように、日本は先進国内で開業率も廃業率も低いという実態があります。

したがって「後継者不在により廃業していく企業を減らす」ことは、最重要の課題ではありません。

本当に優良な技術や顧客基盤を持っている企業の場合、仮に後継者が不在でも、M&Aにより引き継がれていく可能性があります。

また、現経営者の意志として次世代に企業を引き渡していきたい場合、後継者選びの前に「喜んで引き受けたくなるような企業づくり」を自分の責任として行うことが重要です。

その際、代表者による連帯保証債務がない財務体質や堅実に成長を続けている実績など目に見えて分かるスペックを磨くことも大切ですが、もっと大切なものがあります。

長きに渡って継続する企業や事業は、時代に応じてビジネスの姿を変えていく柔軟性を持っていますが、明確にされたコアバリューがあってこそ、世代が変わっても一本芯の通った事業展開が可能になります。

つまり、事業承継において「受け渡すもの」は、株式でも顧客でも技術でもなく事業に息づくDNAだという考えのもとに理念経営を推進することで、そこに共鳴する人物を後継者にするべきです。

そのうえで、事業承継をせずに廃業を選択する企業があっても問題ないと思います。

むしろ、日本経済にとって新陳代謝を高めることが必要なので、廃業に目を向けることより開業率を10%の水準まで高めることを考えることの方がよっぽど重要です。

そのためには、日本人の異常に低い起業意識を高めなければ始まりませんが、このテーマについては一筋縄ではいきそうにないので、改めて考察を行いたいと考えています。