1 社長だったら誰でも儲けたいと思う

会社を興して社長になろうと考える人はどんな目的を持っているのだろうか?

 

事業を通じて実現したい夢や希望があるのは当然として、苦労も多い社長になった以上、やっぱり事業で儲けて金持ちになりたいという目的があるはずだ。

 

これが、創業社長ではなく二代目社長だと、偽らざる本音を言えば、夢や希望より金持ちになりたいという気持ちが強くなることが多いはずだ。

 

しかし、最初からある誤解を持ったまま社長になる人が多い。そういう人は、実際に商売を始めてしばらくすると、「こんなはずじゃなかった」と呟くことになる。

 

それは、「儲ければ、金持ちになれる」という誤解である。

 

2 日本における起業は金のない人の選択

こんなことを言うと、多くの社長を怒らせてしまうだろうが、誤解を恐れずに口にする。

 

少なくとも日本において起業するという行為は、金がない人が考えることである。

 

今どき、初めから金持ちな人は事業などしないで投資する。そんなことはないという反論に対しては、こういう質問を投げ掛けたい。

 

これから売り出される年末ジャンボ宝くじは、1等+前後賞で7億円という高額配当金だが、万が一この7億円の宝くじを当てたら、全額事業へ投資するか?

 

7億円の一部を使って事業を起ち上げたり、既存事業へ投資をすることはあるだろうが、おそらく全額を事業に突っ込む人はいない。

 

なぜなら、事業に投資することはリターンが不確実でリスクが高いと考えているからだ。

 

我々の多くは、なんだかんだ言っても、基本的に事業は危険なものだと思っている。

 

だから、元金を持っている人は、不動産や株式や金に投資することに一生懸命になることはあっても、事業投資に熱を上げる人は滅多にいない。

 

やったとしても、大怪我をしない程度に留まる。資産防衛という意味では、正しい見識だと思うし、その姿勢を批判する気持ちは全くない。(不動産や株式や金への投資の方がより低リスクかどうかは定かではないが・・・)

 

その一方で、今は貧乏でも、事業で金持ちになろうと考える人のほとんどが、少ない資金で事業を始め、銀行から金を借りて事業を拡大し資産家を目指す。

 

日本の中小企業は自己資本比率が低いとよく言われるが、その原因は金融機関からの借入金にある。

 

年商1億円、営業利益率10%で年間1,000万円の利益を出しても、営業外損失として借入金利息を支払い、400万円程度の税金が発生し、残りのほとんどすべてを返済元金で持っていかれる。

 

これでは、事業で儲けることができても、決して金持ちにはなれない。

 

だから、たとえば3,000万円の退職金を元手に会社を興し軌道に乗せられた人は、「事業で金持ちになったのではなく、最初から金持ちだった」が正解だ。

 

一方で、事業で金持ちになろうとする人に付いてくるもの、それは負債・借入金だ。

 

優良な中小企業を維持するためには、常に一定の借入金残高が必要になる。まして事業が急成長する場面では借入金も急成長する。

 

ところが、企業が上場すると借入とは無縁になることができる。

 

上場企業には、さまざまな資金調達の制度が用意されている。

 

例えば、上場会社のいくつかについて、直近の決算における売上高経常利益率を見ると、花王は10.0%、スターバックスコーヒ-は8.3%、イオンは3.4%となっている。

 

はっきり言って、これと同利益レベルの中小企業はいくらでもある。でもその経営は困難を極めて、金持ちとは言えない。

 

3 昔は中小企業でも金持ちになれた

でも、20年前までならどんな中小企業も借入金を気にすることなく金持ちになれた。どうしてでだろう?

 

それは、インフレが借入金を相殺してくれたからだ。

 

銀行からの借入で不動産を購入し、店舗を建設して小売業を行う。仮に事業での売上高経常利益率が1%でも、昔は金持ちになれた。

 

不動産の価格が上がり含み益が大きくなっていくので、不動産を売れば大きな利益が生まれ、売らないまでも銀行は含み益分の貸し増しをしてくた。どんな事業をしていても金が生まれてくる構造になっていた。

 

もちろんこんな状況では、経営改善だの財務志向のビジネス・モデルだのに目を向ける経営者はいなかった。

 

インフレはすべての失敗を覆い隠すから、誰も失敗せず、したがって誰も学ばないことになった。これは本当の企業経営ではない。だから、昔の事業での金持ち伝説は、今では役に立たない。

 

事業で金持ちになると、必ずと言っていいほど「借金」が付いてくる。たしかにインフレの時代ならそんなこと気にする必要さえなかった。

 

ところが、これから事業を始めようとしたりこれから事業を承継しようとすると、この問題が大きくのしかかってくる。借入金の元金と利息は事業収益できっちり返さなければならないからだ。

 

先ずは儲からないことには話にならないが、儲けたところで金持ちになれるわけではない。

 

4 金持ちな中小企業を増やす

私は、自分自身が中小企業の経営者だったこともあり、「儲ける」と「金持ちになる」の違いを否が応でも実感することが多かった。

 

「儲ける」ことは、「金持ちになる」ための必要条件ではあるが十分条件ではない。(世の中には、一度も黒字になったことがない事業を売却して、大金を手に入れたYoutubeの創業者みたいな人もいるので、必要条件でもないかもしれない。)

 

金持ちになることは企業経営の最終目的ではないが、だからと言って夢や希望が叶うなら清貧に甘んじるべきとは、微塵も思わない。

 

せっかく起業する、あるいは企業経営をするなら、結果的に「儲かる」だけではなく「金持ち」な会社になってもらいたい。

 

金持ち企業になれば、経営者の不安の大半は払拭され、未来への投資余力が格段に増加する。

 

未来をより良くするために今まで以上の時間とエネルギーを掛けることにより、企業の好循環が始まる。

 

そういう企業は、社長も社員も取引先も、間違いなく幸福度がアップする。その意味で、金持ちな会社を目指すべきだと考えている。

 

そのためには、良い商品を持つだけでも、無借金経営になるだけでもダメだ。

 

ビジネスモデル・財務・人と組織・リーダーシップといった企業活動全体が、「金持ち」になるようにデザインされていなければ到底無理である。

 

だからこそ、当社の提供するコンサルティング・プログラムは、企業が「儲かる」から「金持ち」になることを目的としている。

 

これを機会に、企業経営者や起業を目指す方は、「儲ける」と「金持ちになる」の違いについて、じっくり考えられてはいかがだろうか。