低空飛行なスポーツ遍歴から学んだこと

いきなり私事で恐縮ですが、私のスポーツ遍歴についてです。

 

小学一年生のときに剣道を始めてから高校まで続け、大学に入ってからはアイスホッケーに鞍替えし、卒業後も30歳頃まで東京都の社会人リーグでアイスホッケーをしていました。

 

以後競技からは離れ、フィットネスクラブでウエイトとカーディオのワークアウトをしながら、ダンベルやその他の器具を揃えて自宅でワークアウトをしたり屋外でジョギングをするなどして、身体を動かすことを続けてきました。

 

最近では、自宅の至近距離に24時間営業のボクササイズ・スタジオが出来たので、この半年ほどは時間をやり繰りして、ほぼ毎日通っています。(剣道、アイスホッケー、ボクシングとグローブをはめて手が臭くなるスポーツが向いているようです・・・)

 

その甲斐があってか、体型は維持され、もちろん健康診断で問題となる数値は無く、安静時心拍数が50をはるかに下回っているので、スポーツ心臓になっています。

 

こう書くと、単に自慢話がしたいだけだと思われるでしょうが、お伝えしたいことはそういうことではありません。

 

長年ワークアウトを続けていると言いましたが、より厳密には、何もしていなかった半年から1年くらいの期間が複数回あります。

 

中断した期間が発生する原因は、大きく分けて2つあります。

 

一つ目は、モチベーションの低下です。「少し体重が増えたから元に戻そう」とか「体力の低下を感じたから鍛え直そう」とか、ワークアウトを始める動機はその時々で様々ですが、何ヶ月間か続けているうちにワークアウトの成果が一時的に頭打ちになると、「これを続ける意味があるかな」と疑問を持ち始めたり、同じことの繰り返しに飽きることで、モチベーションが低下することがあります。

 

二つ目は、仕事で緊急案件とか重要事項が発生すると、「今はワークアウトに時間を使っている場合ではない。目前にある優先順位が高いことにきちんと取り組むべきだ」と考えて、ジム通いから足が遠のいたり、ジョギングを中断したりという状況が発生します。

 

ただし、一つ目の原因と密接に関係していて、すでにモチベーションが低下しているところで何か重大事が発生すると、それを理由に一時中断するという複層的な因果関係が存在します。

 

このような経験を踏まえて、ワークアウトについて何を学んだかというと、「始めることや短期間だけ頑張ること以上に、どんなに低空飛行でもいいので、続けることに意味がある」になります。

 

世間のワークアウト事情

では、実際にワークアウトを継続的に行っている人は、どれくらいいるのでしょうか。

 

厚生労働省による平成25年度『国民健康・栄養調査』によると、「運動を習慣とする者」は、全年代を通して、男性33.8%女性27.2%となっています。

 

厚労省の定義では「運動を習慣とする者」とは、「1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者」となっていますが、この「運動」には日常生活に組み込まれたウォーキングやエスカレーターではなく階段を意図的に使用することなども含まれているようなので、本格的なワークアウトというより「身体を意識的に動かすこと」実施している人の割合と捉えた方が良さそうです。

 

次に、フィットネスクラブの市場規模はどうなっているでしょうか。

 

フィットネスクラブの業界誌『FITNESS BUSINESS』が推計した、平成26年のフィットネス業界の数値は次のとおりです。

 

  • 市場規模:4,316億円
  • 施設数 :4,375軒
  • 会員数 :4,193,706人

 

平成27年の成人(20歳以上)人口は、1億503万人なので、フィットネスクラブの会員となっている割合は、全国民の3.3%(全成人の4.0%)ということになります。

 

ちなみに、同じく『FITNESS BUSINESS』誌の調べでは、フィットネスクラブへの加入率は、米国が17.3%、英国は13.7%になっています。

 

また、最も手軽にすることが出来るジョギング・ランニングをしている人の割合については、笹川スポーツ財団による『スポーツ活動に関する全国調査』によると、2014年の実績で年に1回以上の実施している成人は、男性で12.9%、女性で6.1%となっています。

 

これが、週1回以上になると、男性で7.4%、女性で3.2%となり、週2回以上にまでハードルが上がると、男性で3.6%、女性で2.2%になります。

 

フィットネスクラブの市場規模は、過去10年間で見ると、ほぼ横ばいです。ただし、年齢構成比を見ると、65歳以上の高齢者層の増加傾向が強い反面、20代や30代の構成比は減少する一方です。日本全体の人口動態が高齢化しているのだから、その傾向は当然かもしれませんが、相対的に若い世代において、日常的にワークアウトを取り入れる習慣が強まっていないことは事実です。

 

ランニング・ジョギング人口についても、どのレベルから「習慣化」している人と決めるかは難しいですが、週に2回以上ランニングを実施している人を仮に習慣化できている人だとすると、2012年がピークで385万人で、2014年は374万人となっています(同じく笹川スポーツ財団の調査結果より)。これは、成人人口の約3%に留まります。

 

皇居の外周道を見ると、ランナーでごった返しているために、空前のランニング・ブームが続いているようにも見えますが、コアなランナーが熱心に走っているのが実態で、必ずしも新規にランニングやジョギングを習慣化する人の数が増えている訳ではなさそうです。

 

私個人の経験だけに留まらず、こうしたマクロ的視点から見ても、ワークアウトを習慣化することは、かなりハードルが高いことは間違いなさそうです。

 

ワークアウトを継続する人としない人の境目

ワークアウトを日常的に行う人が多くない現状から、集客のためのキャッチ・コピーは「30日間でつくるシックスパック」とか「1日15分 2週間でタフ&ビューティ・ボディ」といったように「短期間」で「簡単」に成果を手に入れることができることを強調してきます。

 

しかし、実際にワークアウトを継続している人は分かることですが、詰まるところ、体重の減少や体型の変化という結果を手に入れるためには、単調なワークを長期間繰り返す以外の道はありません。

 

何か特別な方法があって、一夜にして見違えるように痩せたり筋肉が付いたりすることはあり得ないことを、長年ワークアウトを続けている人ほど知っています。

 

裏を返すと、ワークアウトを習慣化することに失敗する人は、すぐ結論を求めたがる傾向があります。週に2回で1ヶ月しか経過していないのに、二の腕が引き締まらないとか、1kgしか体重が減らないとか。

 

おまけに外部からの情報に振り回されやすいという特徴があります。

 

そのため、少しだけやってみて結果が目に見えないと、本やネットやテレビなどから仕入れてきた新手の方法論が気になり、いまのやり方に疑問を持ち始め、粛々と進めるしかないワークアウトに身がはいらなくなる悪循環に陥ります。

 

たしかに、パーソナルトレーナーの話を聞くと、運動を始めても続けられる人は、多く見積もって3割程度のこと。続かない理由は、表面的なあれこれはともかくとして、結局は、目的が曖昧だというところへ行き着くそうです。

 

一番分かりやすい「痩せたい」という目的であったとしても、具体的に何キログラム痩せたいのかを明確にしている人は、意外にも少ないようですし、ましてや「いつまでも若々しくいたい」とか「細マッチョな格好良い体型になりたい」という目的では、その先の「なぜ」までを深堀りしていないために、曖昧な目的に属します。

 

だからと言って、長期間に渡ってワークアウトを継続している人が、最初から明確な目的を確立していたかというと、そんなことはありません。

 

最初の動機は、他人からの情報に釣られた曖昧なものであったとしても、粛々と努力を積み重ねる中で、結果よりもプロセスの重要性に気づくことに、ワークアウトを行うことの価値があるのではないでしょうか。

 

そういう意味では、ワークアウトを続けていくためには、最初から明確な目標や効果を期待しない方がいいとすら言えます。なぜなら、どのような動機で始めたとしても、ワークアウトの目的は続けることにあるからです。

 

三日坊主で終わる人は、「短期間に目に見える効果が現れないから、やる意味がない」と言ってすぐにやめてしまうけれど、「効果が現れづらいからこそ、粛々と続けなければならい」ものがワークアウトなのです。

 

できる経営者ほどワークアウトを習慣化しているワケ

私の知る限りでは、できる経営者ほど、長期間に渡ってジョギングやテニスやトライアスロンなどの運動を習慣化している人が多いです。

 

なぜ、できる経営者ほど、ワークアウトを習慣化しているのでしょうか?

 

昔から、欧米のエグゼクティブの間では、肥満は自己管理能力の欠如を表すために、フィットネスに余念がないという話を聞いたことがあると思います。

 

これと同じ理由で、「自己管理能力」を涵養するために、ワークアウトを継続している経営者は、もちろんいると思います。

 

でも、できる経営者は、継続的なワークアウトを通じて、もっと別の重要な価値観を養っています。

 

それは、「結果よりもプロセスに価値がある」と「価値ある結果を出すためには長い時間が必要である」の2つです。

 

したがって、ワークアウトに長く取り組んでいる人は、「すぐに成果が出る」「簡単に儲かる」といった誘い文句に引っ掛かったり、「金ですべてが解決できる」といった似非現実主義者の主張になびいたりすることは、少なくなるはずです。

 

そう言えば、「金で買えないものはない」と言って、その後塀の中で過ごしたH氏は、お勤め期間中こそウエイトダウンしていましたが、いまは立派な肥満体型に逆戻りしています。彼が象徴している通り、実はスリムな体型は金で買えないものです。

 

また、多くの経営者が短い時間軸で判断を繰り返している一方で、できる経営者は長い時間軸でものごとを見て判断をしているという違いがあります。

 

スティーヴン・コヴィーの『7つの習慣』で言えば、「緊急性が高いが重要性が低い」仕事にフォーカスしているか、「緊急性は低いが重要性が高い」仕事にフォーカスしているかの違いとも言えます。

 

フィットネス・クラブの退会理由を調べてみると、どんな調査でも1位になっている理由は「仕事(家事)が忙しくなって、時間が取れなくなったから」です。

 

「得意先との会食が急に決まった」「重大なクレームが発生した」「新規事業を軌道に乗せるために陣頭指揮を執らなければならない」・・・・

 

予定していたワークアウトを取り止めたり、一時中断する理由は、仕事をしている中でたくさん発生してくるはずです。

 

でも、それを理由に、長期的な取り組みであるワークアウトを簡単に棚上げにするマインドは、本音と建前を使い分けているに過ぎず、経営理念には「世のため人のために貢献する」と書いてあっても、目先の業績が悪ければ「一度だけなら」と言い訳をしながら粉飾決算に手を染めるマインドと、それほど大きな違いはありません。

 

時間軸を長くとったプロセス重視の経営を目指す

「今日を乗り切らなければ、明日のことなど考えても仕方がない」

 

そういう割り切った近視眼で、企業の舵取りをしている経営者もいますが、逆説的に言えば、「会社を存続させたければ、存続することを前提に、将来に向けて今すべきことを決める必要がある」のです。

 

たとえ、一週間後の資金繰りに悩んでいたとしても、一年後の社員採用のことを考えておかなければならない。

 

なぜなら、会社が存続する以上、社員採用をしなかったら、会社は今よりもっと重大な危機に直面してしまうからです。

 

だから、経営者は、目前に緊急用件があったり、どんなに業績や資金繰りが苦しくても、そのことはあえて考えずに、存続した先に必要なことを考え、そこから逆算して今やるべきことをしなければなりません。

 

それが出来ている人が、できる経営者なのです。

 

そして、できる経営者は、自分自身の健康の重要性も、健康を維持するためには長期間に渡る不断の取り組みが必要なことも分かっているために、「資金繰りがショートしそうなのに、のんきにジョギングなどしている場合ではない」とは考えません。資金繰りショートの回避に努力をする以上、その先が必ずあるからです。

 

このように、時間軸の長い視点に立てるがゆえに、できる経営者は会社の業績が良く健康体だと思えるときにも、「何もする必要がない」とは考えません。

 

なぜなら、人間の健康も企業の健康も、居ながらにして手に入るものではなく、また放置すれば時間とともに体力の低下を招くことを知っているために、不断のワークアウトが必要であることを知っているからです。

 

ただし、「3ヶ月で売上倍増」とか「実力幹部短期養成」とか「半年で実現するクレド経営」のような短期間ですぐに成果が上がることを唱う取り組みに食指を動かすことは少ないでしょう。

 

ワークアウトを通じて、「人間の身体は人それぞれ違うのだから、やり方も千差万別だろうし、結果はやってみなければ分からない」ということを知っているから、企業においても同じく、お仕着せのパッケージをすべての組織に適用して短期間で成果があがるとは考えないからです。

 

むしろ、3年あるいは5年以上という期間を想定しながら、腰を据えた改革活動に粛々と取り組む道を選ぶはずです。

 

こう言うと、「この変化のスピードが加速している世の中で、そんな悠長な経営をしていたら成長できない!」という反論が出てくることでしょう。

 

実は私も、人後に落ちないほど「せっかち」であると同時に、骨の髄まで「合理主義者」です。

 

だからこそ、無駄なことに時間とその他のリソースを散財するのではなく、最も効果的なやり方として、時間軸を長くとり結果よりもプロセスに価値を置いた取り組みをお勧めしているのです。

 

自らの健康に一抹の不安を持ちながら、経営第一という理由で運動の習慣を作っていない経営者の方は、急がば回れ、ワークアウトを始めそして継続することに重きを置いてみると、経営においても何が本当に重要なことなのかが、見えてくるのではないでしょうか。