経営者は「新年の挨拶」や「年頭の所感」で何を語ったか

経営者が発表した平成29年(2017年)の「新年の挨拶」や「年頭の所感」について、規模・業種にこだわらず、検索結果順に20社のテキストをデータマイニングして、頻出キーワードを分析してみました。

 

その20社のリストは、以下のとおりです。

 

No. 社名
1 株式会社インターネットイニシアティブ
2 JFEスチール株式会社
3 日本中央競馬会
4 株式会社JTB
5 KDDI株式会社
6 株式会社NTTドコモ
7 サイオステクノロジー株式会社
8 株式会社ジェイテクト
9 デンカ株式会社
10 ヒューマネコンサルティング株式会社
11 伊藤忠商事株式会社
12 丸久株式会社
13 丸紅株式会社
14 三菱商事株式会社
15 住友商事株式会社
16 株式会社新潟クボタ
17 清水建設株式会社
18 株式会社東京ビッグサイト
19 東京青果株式会社
20 東燃ゼネラル石油株式会社

 

テキストのデータマイニングした結果は、以下のとおりです。

 

順位 名詞 動詞 形容詞
  回数 単語 回数 単語 回数 単語
1 46 事業 43 思う 29 新たな
2 36 グループ 34 取り組む 11 強い・新しい
3 34 お客様/お客 32 見える 9 大きい
4 31 全国・変化 27 考える 8 高い・大きい
5 30 世界 26 出来る/できる 6 良い・厳しい
6 24 強化 21 持つ/もつ 5 幅広い・欲しい・自ら
7 23 サービス 16 進める・目指す 4 楽しい・深い
8 22 成長 12 図る 3 厚い・広い・素晴らしい
9 21 IT・もの/モノ・環境・企業 11 始まる・続ける・見る 2 低い
10 20 日本 10 加える    
11 19 実行・技術/技術革新 9 及ぼす・続く・努める    
12 18 取り組み・向上 8 働く    
13 17 グローバル(グローバリズム/グローバル化)・課題・拡大 7 やる・感じる・含める    
14 16 影響・状況 6 受ける・振り返る・増す・超える・変わる・変える・与える    
15 15 重要 5 言う・掲げる・繋げる・行う・取り巻く    
16 14 ビジネス・一人ひとり・米国        
17 13 会社・時代・推進・販売・変革        
18 12 お願い・トラブル・価値・開催・基盤・計画・市場・創造・分野        

 

データマイニングの結果から、以下のことが分かります。

 

単語の量は名詞が飛び抜けて多く、以下動詞>形容詞の順で少ない。

 

文章内で、名詞の量が多いことは普通ですが、形容詞の量の少なさと内容の乏しさが目立ちます。

 

よく言えば、「事実(ファクト)」ベースの話をしている経営者が多いので名詞が多く、反対に曖昧かつエモーショナルな形容詞の使用が少ないと考えられます。

 

ただ、名詞が多用されているものの、内容的には凡庸で目を引く言葉はありません。

 

これらのことから、経営者が語った話の内容は、情熱に満ち溢れた「ウキウキ」「ワクワク」するようなものではないことが想像できます。

 

試しに、この一覧表にある単語だけを使って人の心を動かす文章に挑戦してみれば、極めて難しいことが分かるはずです。

 

簡単に言ってしまえば、浮かれ気分を戒めることを目的として、昨年の取り組みが不十分さを共通認識として求め、利益確保・シェア拡大のためには一層の努力が必要であることを社員に伝えようと、多くの経営者は話をしたことになります。

 

使う言葉に現れる経営者の本音

果たしてこのような無機質な単語によって語られる話を聞いて、社員達が心を躍らせ、熱意と情熱をもって今年一年仕事に取り組もうという気持ちになるでしょうか。

 

つぎに、坂本龍馬、織田信長、野口英世、マザー・テレサ、ヘレンケラー、土方歳三、アインシュタイン、福澤諭吉、ベートーベン、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ナポレオン、諸葛孔明、宮本武蔵、ガンジーついて考えてみてください。

 

彼らは、どのような理念のもとに偉大な行いをしたのでしょうか。

 

それは、おそらく現代の経営者の理念とは一致しないでしょう。

 

卓越した偉業とは、「美」「真実」「正義」「英知」「慈善」「博愛」「忠義」「勇気」「名誉」といった時代を超えた価値のために熱心に尽くすことから生まれます。

 

利得だけを語り高尚な目的を語らない経営者

現代の企業経営者は、その職責が、高い成果をあげる組織をつくり最大限に利益を追求することであると信じ明言します。

 

だが、年頭に語る言葉が卓越したものではなく利得を説くだけでで、本当にそれを実現できるのでしょうか。

 

高尚な目的は、人々から自発的な貢献を引き出し、イノベーションを刺激し、困難を乗り越える力を与えます。これによって、優れた人材は比肩なき成果をあげるのです。

 

それなのに、どうして企業経営者の口から、「愛」とか「信念」とか「情熱」といった言葉が稀にしか発せられないのでしょうか。

 

人間にとって最も大切な理念が、経営トップの話のなかにほとんど出てこないとは、どういうことなのでしょうか。

 

経営者に対して「御社は人類の普遍的な理念に貢献すべきだろうか?」と問えば、即座に「イエス」と答えるでしょう。

 

また、初詣のお祈りの内言として世界平和や人類の安寧を願った人は多いはずなのに、実際に自分の会社でそれを提唱しようとする人はほとんどいません。

 

きっと彼らは現実主義者で、会社での日常がありまりにも通俗的で実利を重んじるルーティンの繰り返しなので、崇高さを社内に持ち込むことは、ひどく場違いに感じられるのでしょう。

 

社員を理念によって動機付けられるているか

ただし、「利益」「効率」「競争」といった実利を重んじる価値観に意味がない訳ではありません。

 

ただ、語る言葉がそれだけでいいのだろうか、という疑問を呈しているのです。

 

今回、ランダムに20社の「新年の挨拶」や「年頭の所感」の文章を集めました。

 

しかし、文章そのものは一切読んでいません。

 

あえて使われている言葉にフォーカスしてみましたが、これほどまでに単語が不毛かつ陳腐で、感動を呼ばないのはどうしてなのでしょうか。

 

ビジネスとは、左脳優位で合理性や実利が重視され、理想が軽んじられる世界であり、芸術家や宗教家よりもソロバン勘定を得意とする分野だからでしょうか。

 

その理由は、定かではありません。

 

いずれにしろ、企業も組織である以上、集団の構成員は理念によって動機付けられています。

 

問うべきはただ一つ、それがどのような理念かとうことです。

 

「新年の挨拶」や「年頭の所感」を、どういう目的、そして底流する理念で語ったかを、新たな年を迎える今だからこそ、一段上の目線に立って見直してみてはいかがでしょうか。