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実践経営コラム「黒字経営のその先へ」で伝えたいこと

実践経営コラム「黒字経営のその先へ」で伝えたいこと

「簡単」な話がうける世の中の風潮

多くの専門家が、ブログやWeb記事、書籍などを通して情報を発信していますが、その語り口には、一つの共通した特徴があります。

 

忙しく時間がない経営者やビジネスマンに読んでもらえるように、「簡単」に表現するということです。

 

そのため、誰でも知っていることから話をスタートして、専門家なら誰でも言いそうなことを平たく言い替えて終わるというスタイルに行き着くことが多いのです。

 

そうすれば、話は「簡単」になるかもしれませんが、「分かりやすく」なるとは限りません。

 

「簡単なこと」と「分かりやすいこと」は、非常に似ていますが違うことです。

 

本コラムが重視する2つのスタンス

本コラムが重視する2つのスタンスがあります。

 

  1. 私たちは経営においてなにを知らないかを」を問う。
  2. 「なぜそのことを知らないままで、今日まで済ませてこられたのか」を問う。

 

経営とは非常にファジーなものなので、知らないことがたくさんあるのは当然のことです。

 

だからこそ、「知らないこと」を片端から取り上げるのではなく、知らないことの中に、知らなくてもいいことと知るべきことの境界線をきちんと引くことの重要性を伝えたいのです。

 

このことを「分かりやすく」するために、急がば回れで、無関係に思える話に飛びます。

 

日本人女性の乳がん検査受診率が低い事実とその理由

最近、女性有名人が乳がんに罹り、その事実を発表することが続いています。

 

彼女達は、いま乳がんと戦っている女性を「励ます」という目的に加えて、私は大丈夫だと思っている方へ「がんの発見が遅れるリスクを伝える」「早期発見のための検査受診を勧める」ことを目的としてメッセージを出しています。

 

実際のところ、日本人女性の乳がん検診の受診率は、諸外国と比較すると極めて低い状況です。

 

出典:日本医師会

 

受診率トップのアメリカが80%を超えているのに対して、日本わずか36.4%に過ぎません。

 

ただし、アメリカだけ受診率が高い訳ではありません。フランス、イギリス、ドイツ、韓国も70%前後の受診率であることを見ると、日本の36.4%という数値の低さは突出しています。

 

では、なぜ日本人の女性は乳がん検診を受けないのでしょうか。

 

その理由を探るためには、内閣府が発表した「平成26年11月調査 がん対策に対する世論調査」を見てみました。

 

この世論調査の結果を見ると、日本では、乳がん検診に留まらず、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がんについても、男女とも検査の受診率が50%を下回っていることが分かります。

 

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そして、がん健診を受けない理由として、つぎの調査結果が発表されています。

 

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最大の理由が、「受ける時間がないから(48%)」となっています。

 

しかし、私たちがやらない理由として「時間がないから」と語るとき、それは言い訳で本当の理由ではないことを、自分自身が一番知っているはずです。

 

必要があれば、止められようが反対されようが、人はそれをやるための時間をつくります。

 

むしろ注目すべきは、3番目に多い理由「がんであると分かるのが怖いから(37.7%)」です。

 

他の理由が本音を語っているとは思えない一方で、この理由からは本音が滲み出ています。

 

したがって、「時間がない」「費用がかかる」「必要性を感じない」という理由は、「がんであることが分かるのが怖いから」という本音を隠すための建前に過ぎないと推察できます。

 

実際のところ、この調査において、「がんに対する印象」を聞いていますが、70%以上の人が「がんは怖い」という回答をしています。

 

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「がんは怖い」と思っているから、検査によって「がんであることが分かるのが怖い」というのが、多くの日本人が、乳がん検診をはじめとしてがん検診を受けない本音だと、結論付けても良さそうです。

 

遠回しにがん検診の話をしましたが、「がんが怖い」から「がん検査を受けない」という日本人のマインドセットが、経営者が会社を見るときのマインドセットと映し鏡になっていることを指摘したかったからです。

 

キャッシュフローを重視した経営はゴールではない

会社の倒産を定義することは、意外に難しいのですが、細かいことはさておき、どのような遠因があろうとも、最終的には決済のための資金がショートするという形に収斂します。

 

そのため、多くのコサルタント・税理士は、売上も利益もさることながら、資金繰りを最重視したキャッシュフロー経営をしましょう、という主張をします。

 

たしかに、どんなに大赤字でも資金がある限り、会社は決して倒産しません。

 

では、資金繰りに細心の注意を払いながらコントロールしていけば、会社は繁栄し続けるのかというと、そんなことはありません。

 

「分岐点」を見過ごすことで入る衰退のスイッチ

崖っぷちに立った企業の経営者から相談を受けると、同じ失敗のプロセスを歩んでいることに気付きます。

 

それは、経営者として企業の「分岐点」を見過ごすという過ちを、何年も前に犯していることです。

 

嵐の海を進む船に例えて言うなら、傾きが少なければすぐに元に戻りますが、ある一定以上傾いてしまうと、復元することができずに転覆し、やがて船は沈んでいきます。

 

ある一定の角度を越えて傾いてしまった船は、凄腕の船長をしても、どうにもできません。

 

船長の仕事とは「その角度まで船を傾けないこと」。これに尽きます。

 

そのために船長は、晴天時に、船の性能をあげる、積み荷のバランスをとる、船員の訓練をするといった事前準備を十二分に行うと同時に、早期に嵐の発生を知り針路変更の判断をする必要があります。

 

おなじように企業の経営者も、好調時にこそ重大な経営決断をする必要があります。

 

ところが、経営者はつい目の前の商売にとらわれ、その回復や改善に執着してしまいます。

 

経営者が取り組むべき優先課題とは、事業構造と経営基盤を中長期的に変化させていくための経営決断なのです。

 

そして、その決断をするデッドラインは、ほぼ全員の社長が思っているより相当早い時期にやってきます。

 

企業が倒産する直接的な原因は資金ショートですが、本当の原因は、経営者が必要な時期に必要な経営決断をしていないことなのです。

 

では、なぜ経営者は自社の「分岐点」をやすやすと見過ごしてしまうのでしょうか。

 

その構造を解き明かすヒントが、「がんは怖い」から「がん検査を受けない」という日本人特有のマインドセットにあります。

 

人には「知らないこと」がたくさんある理由は「知りたくない」から

人には、知らないことがたくさんあります。

 

この事実について、少し頭がよい人は「世の中の森羅万象のすべてについて知り得るほど、私たちは物理的かつ時間的キャパシティを持ってないのだから、当たり前のことだ」と考え、何ら疑問を抱きません。

 

でも、「なぜ人はあることを知らないのか」、あるいは「なぜ今日までそれを知らずにいたのか」という問いに対して、もっと深く考えたいと思います。

 

「機会がなかった」とか「面倒臭かった」という答えを簡単に思いつきますが、それは違います。

 

私たちがあることを知らない理由は、たいていの場合一つしかありません。

 

それは、「知りたくない」からです。

 

より厳密に言えば、「自分があることを知らないという事実を知りたくない」からです。

 

つまり、無知の知を認識することを避けたいという主体的欲求が働いているのです。

 

だから、無知というのは単に知識が欠乏していることを意味しません。

 

「知りたくない」「知らずにいたい」というひたむきな努力の結果、無知の知を認識せずに済んでいるのです。

 

言い替えると、無知とは受身で怠惰に過ごした結果ではなく、能動的に努めて得られた成果なのです。

 

そのための前ふりが、がん検診の話だったいう訳です。

 

多くの人は、がんを怖れています。怖れているけれど、あるいは怖れているがゆえに、がんと対峙する自信がない。

 

だから、がん検査を受けないことで「がんである事実を知る機会」を自らの努力で消し去っているのです。

 

経営者が自社の「分岐点」を見過ごす理由も「知りたくない」から

同様に、経営者が自社の「分岐点」をやすやすと見過ごす原因は、単なるウッカリではありません。

 

経営者が、自社の「分岐点」の存在を「知らない」、あるいは「分岐点がいつだったか」を「知らない」とするならば、実は「経営者が必死になって目を反らしている」に過ぎません。

 

自社の問題点を見て見ぬ振りをする経営者が多い

多くの経営者が、「がんを怖れる」にも関わらず「がん検査を受けない」状況を積極的に作り出しています。

 

自社の経営を客観視するとか、自社に必要な適切な問いを設定するなどの取り組みを軽視している企業が多いのは、そのためです。

 

理由を聞くと、ほぼ「がん検査を受けない理由」と同じになります。

 

「時間がない」

「費用がかかる」

「経営に自信がある」

「必要性を感じない」

 

でも、もがん検査と同じで、そこに隠された本音としては「経営に問題があることが分かるのが怖い」からなのです。

 

自社の「分岐点」を見定める努力を怠り、「知らない」でいる努力を続けた結果、ある日突然ステージ3くらいのがんの宣告を受け、手術を受けたり抗がん剤の投与を受けたりして、死ぬか生きるかの瀬戸際で痛い思いをしている企業があとを絶ちません。

 

答のない根源的な課題を問い続ける経営者

私は医学の専門家ではありませんが、医学専門書を手に取ると、さまざまな病気の対処的な治療法がたくさん書いてあります。

 

ところが、「人はなぜ老いるのか」「人はなぜ死ぬのか」という根源的な問いに対する答えは取り上げられていません。

 

なぜなら、そんなこと誰も「知らない」からです。

 

でも、誰も知らないということは、私たちが努力をして目を反らそうとしている核心的な問いなのです。

 

実は、ほとんど全ての経営書やビジネス書、専門家が書くコラムなども、この医学書と同じ構造となっています。

 

もっぱら「資金が足りないときの切り抜け方」「売上が伸び悩んでいる場合の打開方法」のような個別の病症的なテーマについて情報が提供されていますが、「なぜ企業は衰退するのか」「なぜ企業には寿命があるのか」についての、根源的な省察がごっそりと抜け落ちています。

 

なぜなら、そんなこと誰も「知らない」からです。

 

だが、知性的かつ実践的な経営者を目指すならば、自らに課すべき仕事は、誰でも知っている問いに「答を出す」ことよりも、根源的で誰も答を知らない問いから目を反らさずに、その問いを繰り返すことです。

 

何を知っているかではなく、何を知らないかを起点に行われる経営。もし経営に巧拙があるとするならば、売上や利益の額によって量られるものではなく、この経営の基本スタンスの有無が分かれ目になるのです。

 

本コラムの狙い

本コラムが狙うところは、答えることが難しい問い、一般解のない問いを示し、それを経営者一人ひとりが自分の課題として、みずから引き受け、ゆっくりと噛みしめることができるように差し出すことです。

 

私を含め人間とは、例外なく完璧な存在ではなく愚かさを持っている生き物です。

 

その人に知性がある、あるいは能力が高いという意味は、その自分の愚かさに他人に指摘されるより先に気付くことであり、自分の正しさをいついかなる場合でも強弁することではありません。

 

つまり、経営者が経営者でいられるのは、自社のビジネスモデルや戦略の限界に、市場の結果を待つまでもなく先に気が付く限りにおいてです。

 

どれほど証拠を突き付けられても自説を譲らず、どれほど諫言されても自分に都合の悪いデータを無視するような人間は、失敗を先延ばしにする分だけ、結局被害を拡大することしかできません。

 

本コラムが、「知らない」を続ける努力を放棄し「無知の知」を潔く受け入れ、自律的に動的安定経営を御する経営者が増えることの一助になることを願っています。

問い合わせ先 TEL 03-6264-2370 9:00 - 18:00 (土・日・祝日除く)

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