失敗を避けることが大きな失敗の始まり

古代中国の兵法書『孫子』に「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という有名な言葉があります。

 

しかし、「敵を知り己を知る」というところだけクローズアップして、この教えを理解している人が多いのです。

 

どんなに知識をインプットしたところで、「百戦危うからず」といういう以上は、たくさん戦わなければ意味がありません。

 

先日のことですが、「いままで大した失敗もしないで上手くやってきました」と言う社長に会いました。

 

よくよく話を聞いてみると、何のことはない、ずっと同じことしているだけだったのです。つまり、一戦しかしていないことになります。

 

バッターボックスに入って、絶対にバットを振らずに球を見逃し続けていれば、一度も空振りをしたことがないバッターにはなれます。

 

その場合、投手が自滅して四球で出塁することはあるかもしれませんが、バットを振らない限りヒットを打って自ら出塁することはあり得ません。

 

気付いたら見逃し三振でアウトです。

 

でも、空振りのリスクを恐れずにバットを振って、ファールでもチップでも続けていれば、最後はヒットが出る可能性は格段に高まるはずです。

 

目先の利益を捨てて5年後の構想を練り実現を図るのが経営

いま業績好調な会社の社長に、「業績好調ないまだからこそ、先を見越して自らビジネスモデルを変えていく必要がある」という話をよくしますが、このバッターの例え話のようなことが起こります。

 

バットを振らないどころか、バッターボックスにすら入らない経営者が多いのです。

 

だいたい100人の社長と話をして、すぐに着手する社長は2,3人です。

 

残りのうち30人は、変えなければならないということは理解してくれますが、すぐには変えられないという社長です。

 

そして大多数に属する64~66人の社長は、変えられないというより、変えようとしない社長です。

 

最後に残った2,3人の社長は、一番救いようがありません。いまのビジネスを、同じスタイルのままで一層強化することに熱意を傾けているからです。

 

いま正に危機に直面していれば、どんな社長でもすぐ動きます。

 

だから企業再生の局面では、社長がいてもたってもいられずに、むしろ少し落ち着くように諭す必要すらあるのです。

 

でも、いま現在何も変えなくても7000万円なり8000万円なりの利益が確実に上がっている状況では、人はなかなか動けないものです。

 

どんなにいま頑張っても、5年後には衰退すると、頭ではわかっていても、いまは止められないのです。

 

しかし、衰退し始めてから方向転回をしようとしても、現実には選択肢は極めて限られてしまいます。「それまでになんとか」では遅いのです。

 

いま利益が出ているうにち、5年後を見越した新たなビジネスモデルを考えておかなければ、結局は会社を潰すことになります。

 

一方で、継続して安定した業績をあげている中小企業は、変化に強いという特長を持っています。

 

したがって、これからの時代の経営者は、変化に対して受動的に強いだけではなく、能動的に変化を起こすことのできる企業文化を確立し、組織・財務等の経営基盤の柔軟性を高めることが唯一にして最大の経営課題であることを断言します。

 

経営者として、崖に向かって真っ直ぐに進んでいるにもかかわらず、ハンドルを切らず、プレーキを踏んでスピードを落とすだけのドライバーになっていませんか。